Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ベルばらのパロディ

「広報さっぽろ」のマナー広告

2018年7月4日の北海道新聞に、札幌市の広報さっぽろの6月号で、ベルばら風のイラストを使ったマナー順守を訴える広告に、池田理代子プロダクションからクレームが入り、札幌市が謝罪したという記事がありました。

www.hokkaido-np.co.jp

  • 6月号は95万戸に配布済
  • 事前に作者側に了解を得ていなかった
  • 特集はマナー順守を訴える内容
  • 「オシカル」が「マナー・シラントワネット」の問題行動をたしなめる
  • 名前や風貌、服装がベルばらの登場人物「オスカル」「マリー・アントワネット」に似ている。背景や題字にはバラのイラスト
  • 池田理代子プロダクションは明らかにベルばらのキャラクターを使っていると市に抗議
  • 市は電話で謝罪。広報部長らが事務所を訪れて謝罪。7月号の広報誌とホームページに謝罪文

コメント

問題の6月号の問題のページは下記に、現時点、掲載されています。

http://www.city.sapporo.jp/somu/koho-shi/backno/documents/2018062-7_1.pdf

 

そして、広報さっぽろの7月号に掲載されていた、謝罪文です。

広報さっぽろ6月号の特集について

広報さっぽろ6月号「公共マナーって何かしら?」の特集記事が漫画 「ベルサイユのばら」を想起させるというご指摘をいただきました。 このご指摘を真摯に受け止め、誤解を招く表現となりましたことについて、深くおわび申し上げます。

当事者間では、一応、解決済みのようです。

 

法的には、著作権侵害、パロディ、不正競争、ポリューションなどの問題がありえます。

 

まず、著作権侵害になるかどうかは、ベルばらは有名ですので、当然、「依拠性」はありますし、「表現の類似性」もあると言えばあります。

  • 名前を、オスカル→オシカル、マリー・アントワネット→マナー・シラントワネットとするなど、パロディとして点と、
  • 作画の表現を多少変更している点で、

著作権侵害を回避しようと努力している面はあります。

 

一方、ベルばらのファンからすると、ベルばらのオスカルらしくない、こんなにカッ悪く書かないで欲しいという、ポリューション(汚されている)の批判がありえます。

著作権侵害というよりは、民法不法行為の世界です。今回も、ファンから権利者側への通報のようですので、放置するわけにもいかなったのではないでしょうか。

 

札幌市は、ベルばら風のキャラクターを使用することで、アイキャッチを上げるなど、一定のメリットを受けていますが、通常であれば、権利者側に対価を支払うことが必要です。

 

2017年には、日清食品とベルばらのコラボがあったようです。札幌市も権利者側と話をすると、こんな感じでは実現できたのかもしれません。

www.nissin.com

以前は、無償の冊子だからの商標権侵害や不正競争にならないということはできましたが、最近は、FREEでも儲ける時代ですので、無償ということが、言い訳になりにくいところがあります。

 

しかし、札幌市は、公共セクターなので、日清食品とは違い、利益を得るためにやっている訳ではないので、権利者側に相談しても、お金は検討実費程度しか要求されないのでは思います。

 

権利者側が怒る理由には、次のようなものがあります。

  • ベルばらの漫画の価値を下げている面がある
  • 札幌市の広報誌は、類似の事例を誘発する

 

市側として、権利者側に許可を求めると、

  • 内容にコメントされてしまい、作りたいものが作れない
  • 検討時間がかかる

というのがありますが、後で問題になるよりは、事前につぶしておいた方が、結局は、得策だったのではないでしょうか。広報誌は、印刷会社とやっていると思いますが、広告代理店と違って、権利者側とのパイプがなかったのかもしれませんが、札幌市が出版社に聞けば、簡単に教えてくれると思います。

 

どこまで変えれば、文句言われないかということについては、はじめから違うところまで変えれば、文句を言われることもないということでしょうか。

パロディによって、違法性が阻却されるかは、社会の認識次第で有り、昔の日本はパロディを表現の自由と認めませんでしたが、フランク三浦のケースから考えると、今の日本は過渡期にあるのかもしれません。