Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ブート品の古着の商標権侵害

商標権侵害で逮捕

2018年7月5日の朝日新聞の夕刊で、ブランド品のロゴを無断で使用した古着を販売目的で所持したとして、警視庁が古着店経営者を商標権侵害で逮捕したという記事がありました。

  • ブート品とは、1980~90年代に米国で作れたもの。古着業界で人気
  • 立件は全国初
  • 容疑者はグッチなどのロゴをあしらった古着のTシャツなどを販売目的で所持
  • ロスアンジェルス仕入れた
  • 容疑者の一人は「開運!なんでも鑑定団」にも出た鑑定士

とあります。

 

コメント

ブート品という言葉を知らなかったので、検索すると、一番トップで出てきたのが、次のFashionsnap.comのページでした。

www.fashionsnap.com

まず、「ブート品」の定義ですが、

 「ブート」とは「密造・違法の」などの意味を持つ「ブートレグ / ブートレッグ(bootleg)」の略語。(略)アパレル関連では主に「無断で既存のブランドロゴをあしらった衣服や装飾品」がブート品と呼ばれている。米国では1980年〜90年代に、ブランド品に憧れを持っているが購入することができない中間層や貧困層を中心に流行した。現在では古着として流通していることが多い。

今回の逮捕は、ファッション業界でも意外と思われているようです。世界中にブート品はあふれており、一つの分野として成立しているためのようです。

以前、ブート品を作っていた業者は廃業しており、古着が高値になっているとこと、また、最近は、本家のラグジュアリーブランド側が、自ら同じようなデザインの商品を出して、人気になっているとあります。

 

権利者側からみると、商標権侵害であることは間違いないもの、ブート品は古着であることなどから、甘さが出たということのようです。

 

詳しくは、Fashionsnap.comの記事を見てください。

 

一種のパロディのようなものですが、パロディは著作権侵害では権利侵害の阻却理由になるのでしょうが、商標権侵害においては成立しにくい主張です。

高値で取引されているということですので、買う人も、ブート品と分かって買っている可能性は高いので、この点を突くと、商標権侵害を否定できるのかもしれませんが、相当、高度な内容の訴訟になります。

 

もう一つ、古着ですが、商品が点々と流通しているということで、なんとなく、違法性は無くなってしまっているような感じにもなります。

しかし、そもそもが、違法なものなので、所有者が点々と変わったところで、その商品が侵害品であることは、変わりありません。

 

ブート品とは違う話ですが、中古車やカメラなど、古い商品が、価値を持っていることがあります。商品には商標が入ったままで存在します。

既に一旦、市場に出たもので、市場に出たときは、適法だったとも、現在はその商品は、ディスコンになっており(あるいは会社が無くなり)、商標権者が権利を放棄したりして、現在は第三者が権利をもっていたとします。

そのとき、現在の権利者が、その中古品を権利侵害追及できるかというと疑問な感じがします。

以前みた、映画の「タッカー」を思い出しました。

タッカー (映画) - Wikipedia

 今、タッカーの商標権を第三者が持っていると仮定して、憧れのタッカーの中古車を商標権侵害と言うのは無理があります。

 

もしも、過去の時点で、権利者がブート品を目こぼししていたと証明できれば、その時点で合法になりますので、その商標がそのまま残っているに過ぎないブート品は、合法と言えるのではないでしょうか?

グッチが、簡単に、そう言ってくれるとは思えませんが。