Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

米国のいう知財侵害とは営業秘密

中国による知財侵害報告書

2018年6月21日の朝日新聞に、ホワイトハウスが、中国の知財侵害報告書を公表したという記事がありました。

中国の知財侵害を理由とした高関税措置の理由となるものです。

 

報告書では、知財侵害を次のように分類しているようです。

  1. サイバー攻撃などによる技術や知財の窃盗
  2. 威圧的な外資規制
  3. 原材料の輸出規制を通じた経済支配
  4. 在米中国人による情報収集
  5. 中国政府が後ろ盾になった米企業の買収

トランプ政権は、既に3月に、中国に知財侵害について、詳細は報告書を出しており、この時期の追加で報告書を出し、対中圧力を強める意図とあります。

 

コメント

市場をゆがめる政策であるとか、次世代産業を支配する意図とはあるのかもしれませんが、上記の分類で、知財に関するものは、1サイバー攻撃による技術や知財の窃盗や、4中国人による情報収集、広い意味で、2の外資規制、5の米企業の買収程度までで、3はなぜ知財なのか?という内容です。

 

この後、中国、アメリカ双方で、高関税が発動されています。

 

2018年7月6日の日経には、米風力発電部品大手のアメリカン・スーパーコンダクター(AMSC)と中国国有企業との情報不正取得についての裁判で、8億ドル(880億円)超の損害額が認定されたとあります。

事案は、中国企業が期限切れのソフトをそのまま使っていることが判明し、ソースコード情報を流出させた元従業員のセルビア人男性が、オーストラリアで逮捕されたとあります。

 

また、2018年7月11日の日経(夕刊)には、米連邦捜査局(FBI)が、アップルの自動運転技術に関する機密情報を、中国系の元社員が盗んだという話が出ています。

FBIに窃盗は認めており、中国の自動運転スタートアップで働くつもりだったようです。

 

さらに、2018年7月12日の日経では、鉄鋼メーカーなどの情報を盗んだとしてサイバー攻撃の事例として人民解放軍の当局者5名が起訴された事件や、中国が合弁企業を作らせて中国側に技術を移転させている点、日本のデンソーが2007年に約13万件の電子設計図の入ったパソコンを持ち出したとして、中国籍の男性が逮捕させた事件などを紹介しています。

 

最近の中国の特許出願件数は、非常に多くなっていますので、既にキャッチアップの時期から独自開発の時期に以降したという分野もあり、また、AMSCの事案は2011年の話であり、少し古いという話もあるようですが、営業秘密(トレードシークレット)については、アップルの自動運転の事例を見るかぎり、現時点においても問題はあるのだと思いました。

 

これを聞いて、一時、日本と韓国でも同じような議論があったことを思いだしました。あの時も、新日鐵の情報がポスコに行ったり、電気電子関係の技術が韓国企業に流入したりしたように思います。

 

競争はフェアでなければならないというのが、アメリカの主張ですので、アメリカが言うもの頷けますので、このあたりは、中国としても、中国企業に営業秘密を窃盗しないように仕向ける、何らかの施策が必要ではないかと思いました。

まずは、中国の営業機密の法律を整備して、各社に自らの営業機密を守るように働きかけ、その延長で、他人の営業秘密の不正取得をしない風土を作っていく必要がありそうです。

 

日本では、トレードシークレットは、40~50年年ぐらい前から法律の研究者が、トレードシークレットを議論し、1990年に不正競争防止法に規定され、その後、だんだん、企業も営業秘密にシビアになってきた歴史があります。

中国にも、1993年制定の反不正当競争法があり、営業秘密(中国語では商業秘密)を保護しているようですが、日本では相当時間をかけて行ってきたステップを、中国では、一足飛びに実現する必要がありそうです。