利益相反?
2018年7月25日の朝日新聞の夕刊で、トランプ大統領の長女のイバンカ氏が、イバンカ・トランプ(Ivanka Trump)のブランドを廃業するという記事がありました。
- 現在、直接のブランドの経営はしていない
- しかし、信託を通じて持ち分を維持し、昨年約5.5億円以上の収入
- 反トランプ派の一部が不買運動
- 複数の大手百貨店が取扱いをやめている
- 公務との利益相反を避けるための制約あり。米国内外で成長する力がそがれた
- 例として、日本のサンエー・インターナショナルと日本進出を計画
- しかし、サンエーの親会社が政府系の銀行だったので、公私混同疑惑が浮上
- このビジネスにいつ戻るのか分からない。決断を今下すのが唯一公正な結末
というような内容です。
コメント
このブランドは、それなりに売れていたようですが、廃業するということは、当面は政治に注力するということなのかなと思いました。
The New York Timesの2018年7月24日の記事は、関税の影響に言及しています。同ブランドの社長は廃業の判断への影響を否定していますが、記事は、9月にも、中国製品(衣料品)への関税が予定されていることに触れています。
Ivanka Trump Is Shutting Down Her Fashion Brand - The New York Times
これから、中国と関税合戦になり、経済戦争になるので、足元を見られるようなことはやめておこうという判断なのだと思います。
イバンカ・ブランド商品もほとんどが中国で製造されており、関税が上がると買値が高くなりますが、その影響はなかったというのが、同ブランドの社長の言い分だと思います。
一方、記事が言いたいのは、トランプ大統領が、関税などで中国とこれから戦う上で、中国からの商品を輸入販売をしていることは、何らかの理由で、利益相反などと言われかねないということなのだと思います。
朝日新聞は、「利益相反」という言葉を使っていますが、NY Timesの記事でCitizens for Resposibility and Ethics in Washingtonという団体が言っているところでは、トランプ一族は、政府の仕事とビジネスの利益をにじませている(blurring)点が問題と言っています。
どちらかというと、政治的地位を、個人に有利に働かせる点を問題にしており、収賄に近い考え方です。
外国公務員への贈賄の件で、司法取引でも会社が個人を売る自体になったという話がありました。日本社会では、会社のために罪を犯すが、海外では、犯罪を犯すのは、個人のためであるという整理があるようです。この団体の言っていると近いように思います。利益相反というよりは、地位に基づき、メリットを受けているということなのだと思います。
中国製品の輸入で、利益が害されるのは、米国民であり、米大統領は、その米国民を代表して、中国に貿易戦争をしかけている。そのときに、娘のブランドが、中国製であるのは、特に問題ないとしても、多少なりとも、中国政府がイバンカ・ブランドに有利になるように処遇すれば、それは中国につけ込まれる可能性が生まれます。
今回の、イバンカ氏の判断もそこにあるように思いますので、そこまで考えると、「利益相反」と言えなくもないところでしょうか。
そして、もしトランプ政権側がそう考えて、ブランド廃業まで決めたのだとすると、この決断、なかなか重要な判断だったのではないかと思います。
イバンカ氏が、中国で商標権の登録が認められ、追加の出願をしているだけで、問題になるようですので。