Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標登録表示Ⓡ再考(2)

グローバル商標での虚偽表示

 

米国商標法では、損害賠償を請求するためには、相手方の悪意を立証するか、商標登録表示をすることが必要とされており、Ⓡは簡易な商標登録表示方法として、普及しています。

 

一方、商標権をグローバルに考えると、国毎、商品毎の権利という側面があります。商標権がない国や、商標権がない商品に、Ⓡをつける、すなわち、商標出願中(権利にはなっていない)でしかない場合や、使用しているが商標権はない場合などは、Ⓡをつけることが、虚偽表示になってしまう場合があります。(この問題は、米国特許の国内問題とは、違う、グローバルな課題です。)

 

企業としては、虚偽表示を回避するために、ある程度は商標登録がとれているとしても、完全には自信がないので、Ⓡではなく、商標であると認識していることを示すTM表示としておこうという話をよく聞くようになりました。実際、Blurayなどでは、そのようにしています。

 

ただし、Ⓡではなく、TMを選択する場合に、米国で損害賠償請求する場合には、悪意の立証が必要になります。

この点、有名な商標の場合は、悪意の推定が働くという判例もあるようです。

 

商標登録が取れている有名な商標が、TMをつけていたり、ⓇもTMもつけなかったり、法律が想定していなかった奇妙な状況になっています(NIKEのスウォシュマークには、ⓇもTMも、どちらも付いていません。デザイン上の問題と著名性からだと思います)。

 

世の中、奇妙な方向に進んでいるように思います。

 

●ちなみに、

®️の話では、グローバル標準的な意味で、DennemeyerのWebサイトが良くできているようです。参考になると思いますので、ご確認ください。

Overview: Dennemeyer

 

アメリカは既述しましたが、その他、メキシコ、チリ、ペルー、フィリピンなどでは、Ⓡが付いていない場合、商標登録は第三者に主張できないため、商標登録表示は必須とします。それ以外の国では、第三者への権利行使可能という警告をしている効果です。

 

Ⓡは、通常、商標の右肩につけるようです。そして、権利がないのに、Ⓡをつけることは違法と説明しています。

ただし、英国ではどこかの国で登録があれば、違法ではなくなり、フランスでは、Ⓡに法的な意味を認めていないとあります。日本は、フランスに近い運用です。EUTMでは、欧州司法裁判所は、商品の自由な移動を優先して、広告や不正競争法の違反と考えないとあります。

 

Dennemeyerのおすすめは、輸入時にⓇを消したり、一般にパッケージからⓇ外すことではありません。

ドイツの判例を紹介して、製品や少なくとも広告に、このⓇは他国向けの情報と記載することを勧めています。

 

Dennemeyerは、結局、国毎に規制が異なるので、輸出地域、商品のリストに基づき、現地の商標代理人の意見を確認して、決定するしかないとし、TMもⓇもつけない方法を賢明かもしれないとしています。 

 

TMは、アメリカと英国で認められてきた表示ですが、ドイツでは、TMであっても商標登録取得後しか使用できないという判例(驚くべき判例です。登録商標と誤解を与え、不正競争にあたる)と反対の判例が対立しているようで、当面は「登録後にのみ」、TMを使用することを勧めています。

上述のドイツの判例は、面白い点を突いています。ⓇもTMも第三者に対する警告効果としては同じであり、その言わんとするところは分かります。

 

●なお、米国のTMEPのⓇの記載です。 

https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/print?version=Oct2014&href=TMEP-900d1e1285.html

 

●国毎に商標登録表示を、ⓇかTMかに、変えるというのは、大変な作業で、実務的に無理です。コストがかかりすぎます。

そうかといって、折角商標登録を取れているのに、社会に権利がとれていることを、全く主張せず、TMや無表示として、ごまかすのは、商標権者の努力義務としての商標登録表示の制度とあまり整合性は、とれていません。

 

●望ましくは、実際に製品を輸出する各国で、緻密に商品単位で、商標権を取得して、堂々と胸を張って、Ⓡをつけることです。

日本は、類似群コード(短冊)で商標権管理が楽なのですが、グローバルには単品指定です。すでに、欧州でもクラスヘディングが認められなくなっていますし、日本企業も目を覚ますべきです。中国も、韓国も、単品指定です。

また、アメリカでは、3M社の公報をみていると、毎年、3M商標の新商品を商標出願しています。

商品が追加されるたびに、商標出願するのが海外での商標権管理の基本と考えると、虚偽表示になるのが怖いからⓇではなくTMというのは、ナンセンスであり、積極的に商品単位で商品管理をして、外国出願をすべきとなります。

 

目標をここに置くと、日本企業の外国商標のレベルが一段とアップすると思います。このように、前向きに、🄬を捉えることが、外国商標の実務としては、あるべき姿だと思います。

 

 

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