その利用と影響
2018年9月7日の13:30~17:50に、弁理士会とニューハンプシャー大学法科大学院の共催セミナーが、弁理士会館であり、参加してきました。
参加の理由は、ロースクールとの共催というのが面白そうだったのと、AIや機械翻訳(Machine Translation)に興味があるのと、生きた英語を聞ける機会(同時通訳なし)、という3点です。
さて、機械翻訳ですが、ニューラル翻訳が出て、格段に進歩したのですが、知財業務にどれだけ使えるのか?という内容です。この部分のメインスピーカーは、サヤガタ知的財産事務所の稲葉滋弁理士でした(Webで経歴をしらべると、私と同じ時期に同じ会社におられたようですが、存じませんでした。こんな優秀な方がいたのかと思いました)。
講演の内容
- この30年で特許事務所の仕事は、日本語タイプ→ワープロ、郵送→電子出願、手捲り調査→オンライン調査、telex/Fax→email、紙ファイル→ソフト管理と、生産性が向上している
- 機械翻訳は以前からあるが、Neural機械翻訳が2014年に出来て格段に精度が向上
- 中国専利局が、WIPOのPATENTSCOPEに、中国出願とUSPTOへの翻訳を提供
- EPOが、Googleに数百万の人間が翻訳した、特許資料を提供
- 先行技術調査でグローバルな特許情報が必要
- 日本特許庁は、日本語と中国語・韓国語の機械翻訳を推進中(※今や、日本と欧米だけの先行技術調査では、正確な審査ができないようです)
- J-PLAT PATの英語版で日本語の明細書を英語で提供
- 機械翻訳は、機密保持の論点がある(Googleの約款)→機密部分を除いて使用するなど
- 実験したところ、日本語→英語、韓国語→日本語は得意。中国語⇔日本語は得意でない(得意、不得意がある)
- 訳し不足、訳し過ぎがある
- 機械翻訳しやすい日本語にする https://www.tech-jpn.jp/tokkyo-writing-manual/
- 事後編集が重要
- 完全に人間の翻訳に置き換わるわけではないが、翻訳のコストを下げ、翻訳の生産性を向上させる
- 中小企業が外国出願を検討する契機になることが望まれる
という内容です。
実演もありました。Internet explorerではなくGoogle Chromeを使う必要があるのですが、WIPOのデータベースではHTMLを選択し、Google Chromeの日本語に翻訳をすれば、一瞬で明細書や、商標情報が、翻訳されます。
詳しくは理解していませんが、Google patentという調査ツールがあるようで、これとGoogle翻訳を組み合わせデモをされていました。
中国、台湾の方も、このテーマで話をされたのですが、中国語⇔英語はだいぶ使えるようです。一方、台湾の方は、難しい面もあるように言っていました。
EPOは、域内でも多言語で、その障害を改善する必要性に迫られているようであり、Googleと組むなどの背景のようです。
ちなみに、今回の講演会は、ニューハンプシャー州大学法科大学院を紹介することが目的のようです。
もともとのFranklin Pierce Law Centerは、1973年にニューハンプシャー州の最初の法科大学院として設立、知財に力を入れていたようです。この名前は聞いたことがありました。
2010年からは、ニューハンプシャー大学に入り、Franklin Pierce Center for Intellectual Property at University of New Hampshre School of Lawとして、ニューハンプシャー大学の法科大学院の一部?となっているようです。
世界中の企業やローファームに、アルムナイ(卒業生)がいるようです。今回の講演会もアジア地域にいるアルムナイが企画したもののようです。北京、台北、ソウルなどを巡回する感じです。アルムナイに結束力があるなと思いました。
講演会の後、簡単な懇親会があったので、ある質問をしたのですが、今は答えがないが、INTAの総会がボストンであり、ニューハンプシャー州のコンコードは1時間と近い、興味があったらそこに来てくれたら、沢山のアルムナイがいるので、解るのではないかという回答がありました。
法学部出身なので資格上は1年コースのL.L.M.に行けるのですが、学力(英語力を含む)が伴わないのと仕事があるため、1年間実際に行くのは難しいかと思いました。
頑張って、Summer Courseかなぁという感じです。