Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

陰徳か陽徳か

ブリヂストン美術館の名称変更

2018年9月6日の朝日新聞で、ブリヂストン美術館が、アーティゾン美術館に名称変更するという記事を見ました。

内容は、

  • 2019年7月に入居するビルが建て替え完了
  • それに合わせて、館名を「アーティゾン美術館」に変更
  • アートとホライゾン(地平)を組み合わせた造語
  • 従来のイメージから脱却する意図

とあります。

 

同美術館のサイトを見ると、現在、建替えにより長期休館中とありますが、建替えの様子が早回しのビデオで見られて、建替えの様子自体がアートになっています。

ブリヂストン美術館

 

ニュースリリースによると、名称変更の理由は、次のように説明されています。

今回の館名変更は、新たな方向へ踏み出す決意の表れであり、当財団の基本理念である「世の人々の楽しみと幸福の為に」を実践するために、名実ともに全く新しい美術館を目指します。

また、次の記載があります。

  • もともと開館当時から、同美術館は、石橋コレクションを公開するとともに、同時代の欧米の作品を紹介する意図
  • 今回、建替えにより展示面積が2倍になり、大規模な企画展とコレクション展が同時開催可能に
  • コレクションも、印象派を中心から、古美術、日本近代洋画、20世紀美術、現代美術にまで大きく視野を拡げる
  • 2020年1月に、オープン

コメント

タイトルに記載した、陰徳(人に知られないようにひそかにする善行。隠れた、よい行い)か、陽徳(あらわに人に知られる徳行)が良いのかは、難しいところです。

日本では、かつては、陰徳が好まれました。また、「陰徳あれば必ず陽報あり」と言われるように、陰徳こそが、プラスになるという考えもありました。

 

しかし、海外では、この陰徳は通じません。通常は、良いことをしているなら、良いことをしたとしっかりと主張しないと、伝わらないと考えます。

 

ネーミングライツなども、スポーツ施設などの支援をする替わりに、その功績を称えてで、施設の名称に企業名やブランド名を冠するものです。冠コンサートが多いのも、同じ理由です。

 

公益財団法人 石橋財団と、企業としてのブリヂストンの現在の関係は、よく知りません。しかし、両者は、基本的には、別物です。

ブリヂストンの商標は企業側がもっており、財団がその名称をPRする必要性はありません。しかし、現在、折角、ブリヂストンのPRができているのに、名称を変更するのは、企業としては、もったいないなと思いました。

 

このような美術館は、普通の企業が持とうと思っても、なかなか持てるものではないと思います。また、ブリヂストンのブランド価値に非常にプラスとなるものですので、なんとか、企業からネーミングライツ的に支援をするなどして、現在の名称を続けることはできなかったのかという気がします。

 

あと、「アーティゾン美術館」の名称ですが、石橋財団の美術館館ということなら、非常に普通なのですが、石橋美術館ということもできたように思います。

この点は、「出光美術館」の出光とちがって、石橋はブランドではないので、英語の造語になったというところでしょうか。

 

なんとなく、折角のブランド戦略が、もったいないというのが、感想です。