Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

欧州報道機関とネットニュース

対価の請求と法案

 

2018年9月6日の朝日新聞に、欧州の18の報道機関が、グーグルやフェイスブックなどの大手インターネット企業に対して、ネット上で流されるニュースに対価を求める共同声明を出したという記事がありました。

 

グーグルなどが、他人が作った記事で、多額の広告収入を得ていることで、報道機関の広告収入が減っているという主張のようです。

 

また、欧州議会では、ネット企業に記事使用料の支払いを義務付ける法案があり、12日に採決をするとあります。

 

欧州は、米IT企業に対抗するため、個人情報についての新しいルールを作ったという話は、よく聞きますが、この話は初めて聞きました。

 

検索してみると、数年前から議論があったようです。

2015年9月10日のロイターの記事に、インターネットで、ニュース記事の見出しや本文をまとめて表示するグーグルなどに対して、記事の配信元に使用料を支払う制度が議論されているとあります。

 

しかし、ドイツで同様な法案が施行され、アクセルシュプリンガーがニュースをグーグルに表示させない実験をしたところ、閲覧数が激減したので、断念したということです。

 

また、2015年3月4日のHUFFPOSTに、スペインでも、ニュースのアグリゲーション(収集)サイトから使用料徴収を法制化したようですが、グーグルが対抗策として、グーグルニュースを閉鎖したため、トラフィックが途絶えたという影響があったようです。

www.huffingtonpost.jp

 

ちなみに、無断リンク自体は著作権侵害ではないものの、欧州では、著作権侵害と知りながらのリンクは、著作権侵害で違法という判決があるようです。

「侵害コンテンツへのリンクは著作権侵害」とのEU判決 - BUSINESS LAWYERS

 

グーグルは、フランスでも裁判を抱えていたようです。これは和解になり、グーグルから、新聞・雑誌業界向けの支援基金を作ることを引き出したとあります。基金の規模は6000万ユーロ(約76億円)です。

欧州新聞界ラウンドアップ 「グーグルとの付き合い方」、「無料紙」、「デジタル課金」(上)(小林恭子) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

今回の著作権の法案改正も、これらの流れの延長線にあるようです。

 

新聞社の主張が理解しにくいのは、グーグルが収益をあげている検索連動広告は、検索エンジンに関係するものであり、検索エンジンとニュースサイトとは、別のページです。

グーグルのニュースサイトを運営するのは、読者へのサービスを通じた集客のためではありますが、ニュースサイトのページに広告がある訳ではありません。

これで対価を請求されるとなると、グーグルや日本でいうとYahooも大変だなという気はします。

 

リンク先のマスコミ各社は、記事自体は無料で公開していることが多いのですが、各社のページにはバナー広告はあります(クリックしている人がどれだけいるかは不明ですが)。

 

しかし、新聞が売れなくなり、新聞社が潰れると、グーグルも困るでしょうから、グーグルとマスコミには、一定の持ちつ持たれつの状態があり、グーグルが、なんらかの協力をするというのは理解できます。

 

有料記事を増やしていくことや有料閲覧者を増やすことが一番ですが、何でも無償の時代にこれは、簡単ではありません。

マスコミのサイトを見た人が、サイト内の広告を見るというようにしないといけないでしょうが、それをするには、個人属性などのビックデータをマスコミが活用してターゲット広告をする必要がありそうです。

技術的な協力で折り合いがつけば良いのです。しかし、欧州のマスコミや議会も、よく言うなという感じはします。