電子文書に時刻情報を付与
2018年9月3日の日経に、2018年の1月~6月のタイムスタンプの発行が、1億700万件となり、前年同期比で28%増加したという記事がありました。
- 財務省の文書改ざん問題を受け、データの信頼性を担保する手段として注目
- NTTデータなどの認定事業者が発行
- 国税庁が電子帳簿の要件としている
- 行政手続きの電子化(デジタル・ガバメント)にタイムスタンプなどの電子証明技術は必要
というような記事です。
コメント
経理の電子帳簿で使われているようですが、知財分野ではどんなところで、タイプスタンプが使われているかについて関心を持ちました。主に、ノウハウの秘密管理と先使用権の立証のようです。
●特許化するのではなく、ノウハウとして秘密にする場合、昔の紙ファイルの時代には「秘」と判子を押して、鍵のかかる所に入れておくとか言っていました。
しかし、これは、関係ない社員に見られることや、容易にコピーされて情報が拡散しないようにする効果はあったかもしれませんが、第三者との関係では、あまり意味がありませ
後になって、秘密管理の対象に追加したのではないかと主張されてると、反論できません。
重要なものは、公証人役場に持っていき、確定日付をもらうこともできますが、全ての秘密書類にこの対応は無理です。
タイムスタンプなら、存在立証や内容が改ざんされていないことを立証することが可能なようです。
●秘密管理と並んで、もう一つは、先使用権の立証資料ということです。特許出願しないと決めたときに、先使用権を立証するためとあります。
●さらに、特許無効を主張するための他社情報などを、タイムスタンプで保存しておくともありました。
●米国も先願主義に移行したと言うものの、発明ノートを毎日つけていると思います。セイコーの納入事例で武田薬品の事例は、これに近いのかと思います。
●このタイムスタンプ自体は、NTTデータやセイコーソリューションズが提供しているようです。セイコーソリューションズの場合、年間いくらという比較的リーズナブルな定額制でソフトを提供しているようです。
https://www.pfu.fujitsu.com/tsa/downloads/ssol-kakaku-for-pfu.pdf
そして、INPITなどは、タイムスタンプ保管サービスというものをやっているようです。国の機関であり、こちらは無料とあります。INPITのWebサイトには、導入企業の事例紹介がされていました。
ということで、オープン&クローズ戦略を実際に推進するためには、タイムスタンプの活用は必要なことのようです。
ただ、半期で1億件というのは、まだ、たいした量ではありません。新聞記事にあった行政庁内の文書であるとか、経理の書類とか、本当に電子化が始まれば、このスケールではないんだと思います。
特許の担当の方は、タイムスタンプに詳しいのでしょうが、商標やブランドではタイムスタンプは気にしていなかったのですが、これからは、少し気にしようと思いました。
あまり議論されていないのですが、将来は日本での先使用権から、周知の要件が削除されても良いはずです。
そうなると、このタイムスタンプは、一気に商標でも意味が出ています。
他者に使用されても問題ないが、クレームされるのは嫌だから出願しておく程度の商標は、タイムスタンプで十分となります。