Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ブランドライセンス商品(バーバリー)

本家がブランド価値管理を問い直し

2018年9月17日の朝日新聞に、バーバリーなどファッション系のライセンスブランド商品で、ライセンサー側がブランドイメージ管理を強化している事情を説明する記事がありました。

  • 3年前、英バーバリー三陽商会とのライセンス契約を解消
  • 理由は、本家のブランド管理強化
  • 1990年代にマフラーやスカートが女子高生にブーム。商品は比較的安価
  • 本家の高級品とライセンス商品との二重構造
  • 70年代から90年代には、有名ブランドの入った傘、ハンカチ、タオル、スリッパ
  • 当時は、ブランド名の浸透を優先
  • しかし、インターネットの発達とグローバル戦略で、品質管理やブランドイメージ維持が重要に

コメント

面白い記事だと思いました。

 

70年代から90年代に海外のファッションブランドが、日本の商社などにブランドをライセンスしたのは、当時は、日本は遠い市場であり、直接事業をするのは困難だったのと、ブランド名の浸透を優先したためランセンスしていたが、そこで低価格品が出てきてブランドイメージを損なうようになったということのようです。

 

バーバリーのキャメルチェックが、日本の女子高生に流行している時期は確かにありましたが、このことがバーバリー三陽商会のライセンス解消の原因になってしまったとは思いませんでした。

 

日本のライセンシーは、売れ筋の価格帯の商品を量産し、これが安いブランドというイメージにつながり、本家が売りたり高級品のイメージを害するというロジックは分からないでもありません。

 

しかし、ライセンス契約の中で、製品の品質チェックや、ブランドイメージを壊さないための約束はできそうな感じもします。結局、本家がコントロールを怠ったということが、ブランド価値を下げる原因ともいえます。

 

トイレのスリッパに高級ブランドが使われて、ブランドイメージが落ちるというのは、よく言われていましたが、これも、ちゃんと本家がコントロールをしていないためです。日用品のブランドとなってしまい、高級感はなくなります。

また、短期的な利益のために、売れそうならどんな商品にも高級ブランドを付ける日本の商社の姿勢にも問題があったのだと思います。

高い値段で買い取ったり、使用権を取得したら、何年かで収益をあげないといけないので、そうなってしまうのはビジネスとしては分かりますが、長期的なブランド育成視点ではないと思います。

 

特許ライセンスの場合、販売価格帯の拘束は独禁法に抵触するのでしょうが、商標ではライセンサーとライセンシーがWin-WInになり、特にそのブランドが高級品になってしまっても消費者にも迷惑をかけないように思いますので、独禁法上の問題になるようにも思われません。

 

あるとすると、従来通り、普及価格帯で量を優先したいライセンシーと、高級価格帯でイメージを優先したいライセンサー側の意見の対立でしょうか。

欧米では、高級品を購入する層が日本よりも多そうなのと、グローバルマーケットを対象にするので、高級なイメージを確立しておくと、高級品が世界で売れるのかもしれません。

閉じた市場を対象にしたライセンスの限界のようなものがあったのでしょうか。

 

ライセンスは、両社の関係があって初めて円滑に進めることができますので、ライセンス収入を経理の収入に入れてしまうのではなく、その内の何割かは、品質チェックやブランド認知やブランドイメージ調査、両社の長期的ブランド育成方針の確認などに、使うようにしないと、この問題は解決しないように思いました。