Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

任天堂の勝訴

公道カートの事件

2018年9月28日の日経に、東京地裁において、マリオの衣装を客に貸し、公道でカート走らせる行為が、著作権の侵害にあたるという判決があったという記事がありました。

 

内容は、

・被告は、1000万円の支払い

・衣装貸与の差し止めが必要です

なお、次の情報がありました。

・既に社名は、マリカーから、MARIモビリティサービスに変更

・公道を走らせる事業は別の会社がしている

 

コメント

判決文は読んでいないのですが、報道などから、次のような感想を持ちました。

 

不正競争防止法中心の事件かと思っていたのですが、日経の記事では、著作権侵害がメインの論点のように記載されていました。

社名が、既にマリカーから変更されているからでしょうか?

 

2018年9月29日付の東洋経済オンラインの三谷淳弁護士の説明を読んでいると、キャラクター自体は抽象的なもので、著作権法では保護されず、キャラクターの「表現」は著作権法で保護されるとあります。

すなわち、MARIモビリティサービスが自社のWebサイトで、コスチュームを着た人の乗ったカートを表現している点が著作権侵害になるとありました。

 

この会社は、事業として、マリオやその他の任天堂のキャラクターの「価値」を使っていますし、事故などによる風評被害の恐れもあります。

任天堂の正規の承認を受けたサービスであるだろうという消費者の期待権の侵害、サービスの質が低い場合の任天堂ブランド全体への悪影響なども考えられます。

 

結論は妥当と思いますが、上訴もあるでしょうし、まだ、もめそうです。

また、この相手方は、Webサイトを見る限り、判決に簡単に従わないようにも思います。

執行に問題がありそうな感じですので、任天堂としては、刑事罰を求めることも必要だと思います。

 

しかしながら、個人がカートを準備して、マリオの衣装を買ったり、作ったりして、公道を走っても、特に問題になることはないと思います。

ディズニーキャラクターの衣装を着て、ディズニーランドに行っても、問題になるかことはありません。

しかし、ディズニーキャラクターの衣装を着て、飲食店を営業すると問題になります。

 

営業的であるかどうかが、枝分かれのポイントのように思いますが、著作権は個人的なものと、営業的なものを区別しません。

個人的なものは、事実上、著作権者が放置しているだけの状態です。

著作物を利用する個人としては、私的使用として認められる範囲が狭すぎするというところです。

ここが、明確でないと、いつ訴えられるかと、不安なところがあります。

 

TPPの関係で、著作権侵害非親告罪になるということですか、この点も、個人の表現の自由に対する萎縮効果があります。

 

ディズニーランドのコスプレーヤーが逮捕されることはないですし、自身が写真にとって個人のブログに掲載した程度では、警察が逮捕することはないということは、説明が必要なように思いました。