鴻海の調達力、製造力
2018年10月2日の日経に、シャープによる東芝のパソコン事業買収が完了したという記事がありました。買収の観測、発表はニュースになりますが、買収完了もニュース価値があるようです。
- シャープのパソコン事業参入は8年ぶり
- シャープは約40億円で東芝クライアントソリューションの株式の80.1%を取得
- NEC、富士通は、中国のレノボとの合弁事業へ切り替え
- 台湾の鴻海精密工業の調達力の活用
- 昨年度、83億円の赤字を、1~2年以内に黒字化する
とあります。
コメント
10月1日に発表したとありましたので、シャープのリリースが出ているのかを思ったら、出ていませんでした。
適時開示のための東芝のリリースはありました。
https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20181001_1.pdf
一番情報が出ていたのは、買収された東芝クライアントソリューションのリリースです。どうも、記事はこちらが元ネタなのだと思います。
これによると、
株主構成 :シャープ株式会社 80.1%
株式会社東芝 19.9%
従業員数 :約2,400名
とあり、更に、この会社には、海外の会社が傘下にあるとあります。
傘下の海外の会社のうち、中国の会社以外は、メインは販売機能だと思いますので、東芝の営業ルートの買収が重要なようです。
NECや富士通のパソコン事業は、営業ルートは、NECは富士通側に残っており、開発や製造面をレノボにするというものですが、東芝の場合は営業ルートごと買収している点が、違います。
NECや富士通では、営業が残っているので、中身はレノボでも、営業がNEC等ですので、ブランドが残っても違和感があまりないのですが、東芝は違和感があります。
また、シャープが買収したとなっていますが、実質は鴻海の買収であり、そのため、シャープのサイトには何も載っていないのかなと思います。
シャープが、パソコン事業に積極的に関与しているなら、当然、何らかのリリースがシャープからもあるはずです。
シャープなら、自分のブランドを出したいと思うでしょうが、鴻海なら、もともとが受託生産会社ですので、ブランドにはこだわりがなく、事業の発展に、一番、有利なブランドを使えば良いということになります。
例えば、TOSHIBAを使うと、約1500億円の売上に、ブランド使用料を多少支払ったとしても、東芝の名前とルートを使った方が、有利と思えば、そちらを使います。
東芝とすれば、不採算事業を切り離せますし、鴻海の調達力で事業が復活する可能性がありますし、ブランド使用料は入ってくるし(契約によりますので、そんなものがあるのかどうかも不明ですが)、もう一つ、PCはブランド露出効果が高いので、TOSHIBAの企業ブランドの広告宣伝効果が期待できます。非常にありがたい話なのだと思います。
ブランドライセンスですので、アメリカ法でいうQuality Control の義務がありますが、実際上、既に東芝本体にはQuality Controlをする力がなく、シャープに買収された、東芝クライアントソリューションに、技術者も品質管理担当もいるでしょうから、品質管理は、定期的に品質監査や指導をする程度になると思います。東芝としては、プロダクトデザインの方向性の承認や、TOSHIBAロゴの管理程度しかやることもありません。
だんだん、このタイプなライセンスが増えてきて、感覚がマヒしています。
ファッションのラグジュアリー系のブランドでは、バーバリーと三陽商会の関係のように、高級路線と普及価格帯の路線の違いのようなところが、課題になっていたようですが、PCのような製品・サービスでは、ブランドイメージの議論があまり論点になるようにも思えません。
今後、こういうタイプの事業譲渡が、増えていくとして、naked licenseとして、商標権が無効になる可能性があるなら、商標権を譲渡するしかありませんが、消費者が困らない程度の品質が確保されていれば、法律問題にはならないように思います。
全くのコントロール権のない譲渡よりは、ライセンスの方がましはましです。