Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ブランド毀損に対し何ができるか?

ブランド監査はどうか

 

昨日の続きです。

ブランド毀損という言葉は多義的で、最近は、Web広告、SNS広告の掲載媒体を選択するときに、対象とすべきでないサイトを選別するために、ブランド毀損の防止という言葉が使われているという話と、それ以外のブランド毀損が発生するパターンは、業界ごとに違いがありそうだという話でした。

 

そもそも、ブランド毀損というリスクの発生を防ぐための「リスクマネジメント」自体が重要ではあります。また、火消しの意味での、「リスク対策広報」も重要だと思います。こちらは、すでに多くの検討がされています。

 

しかし、ブランドを育て、守るのが仕事である「ブランドマネジメント」として、ブランドリスクに対して、何ができるのか?というと、すぐには思い付きません。

ブランドマネジメントでやっていることも、まったく関係ないわけではないのですが、隔靴掻痒の感じがします。

 

  • ブランドの役割やブランドの重要性、自社のブランドの考え方についての研修→考え方を理解し、従業員が共感する(ブランドのファンになる)ということになりますので、心構えとしては良いのですが、そこに止まります
  • ロゴの適正使用管理→統計を取ると、品質問題とブランドロゴの表示の劣悪さは関係があるのではないかと思っていますが、証拠がありません
  • ブランドのイメージ調査などのリサーチ→結果分析か、戦略立案の前提作業でしかありませんので、こちらも少し遠いように思います

ブランド毀損リスクに少し関係があるとすると、ブランド監査です。企業では、監査は、経営監査、経理監査、品質監査と色々あります。

 

ブランドライセンスでは、ライセンサーがライセンシーに、ブランド監査※をしますが、社内に向けてのブランド監査が、今後は必要になるように思います。

 

ブランドに関する研修を実施し、理解・共感してもらいます。そして、具体的な実践活動があります。そして、その成果をチェックするのがブランド調査とブランド監査です。

 

※ ブランドライセンスにおけるブランド監査とは、適正使用管理監査と品質監査と売上等の経理監査ですが、ラグジュアリーブランドなどは、非常に強い監査(立入監査)をしているようです。

外国の服飾ブランドなどでは、弁護士が監査員として指定されており、抜き打ち検査があり、日本の縫製工場などに入り、例えば、余った生地でミシンの埃除けを作っていたとして、それは廃棄するように命令するというようなことをしていると聞いたことがあります。
横流しの防止は中国のOEM生産委託などでは、重要な話ですが、もったいないと思って、再活用しているだけの事例にも徹底的に厳しく対処するようです。

 

各社とも、資本関係のない会社へのブランドライセンス時や、カーブアウトして行った会社への一定期間のブランドライセンス時など、厳しくブランド監査することがあると思います。

 

従来の日本企業は、ブランドライセンスインが一般的で、ブランドライセンスアウトのノウハウが蓄積していないかったと思いますが、最近は、このような形で実施している会社も多いと思います。これを、社内やグループ内一般の事業部門にも実施することが、一つの方法ではないかと思います。

 

カーブアウトした会社に厳しく監査していると、その会社は必死に対応し、幹部や担当者のブランドについての理解のレベルは上がってきます。また、ブランド的な色々なことを考え始め、自主的な研修会を開催したり、社内がビシィっとするなど、非常に良い効果が出てきます。

これに対して、内部に対して、何らの監査もしていません。ぬるま湯です。ブランド監査を、内部にすることができれば、どれだけ良いかと思います。

 

広告代理店やブランドコンサルが好きなブランドイメージ調査や従業員ブランド意識調査も必要ですが、調査をしても強制力がないために、聞く耳を持たない事業場長や担当者には何の意味がありません。

 

ブランド監査については、ただでさえ、経営監査、経理の監査、品質監査と、監査が多いのに、仕事を増やさないで欲しいと声が現場から聞こえてきます。

そのため、社内に対するブランド監査のハードルは、相当ハードルが高いのですが、注意、警告、改善措置命令、ブランドの使用停止処分、強制力をもった、リアルに対面で行う監査ができれは、その会社のブランド力が強化されると思います。

 

これを実現し、一般的なものにするには、経産省が音頭をとるか、企業研究会や、日本商標協会、日本ライセンス協会、知的財産業界の商標委員会などが音頭をとって、ブランド監査を一般化することが良いと思います。賛同する仲間が必要なのですが、どこかで、委員会を立ち上げたいぐらいです。

 

ブランドライセンス契約において、ブランドイメージ調査、品質監査は、概念的にはブランド監査の下位に位置付けられます。

ブランド監査は、社会的に影響のある、大きなテーマだと思います。

 

追伸:他にも、一般的な監査がありました。環境監査です。環境はISOの方式ですが、内部監査や外部監査員の監査などをやっています。

また、東日本大震災のあと、消防署が、防火の他に、防災の任務をおっており、そのときに、ISOの方式の外部監査の手法を採用しています。

他にも、情報セキュリティなどもあります。

少し、ブランド向けにアレンジが必要ですが、ブランドでやらない、やれない理由は無いと思いますが、いかがでしょうか。