Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標の管理(Trademark management)(その1)

正しい商標の選択

日経新聞の「商標の管理(Trademark Management)」を詳細に見てみます。これを、60年前の商標を得意とする、弁護士や企業内弁護士が書いているところに意味があります。

 

1.商標の定義

2.商標の機能(出所表示、品質保証、宣伝広告機能の説明です)

3.保有している商標の活用

  • 社標/House mark:社標商標のメリット(宣伝不要)、反対に自信のない新製品ではつけないことも
  • 個別商品商標の使用範囲の拡大:ブランド拡張の話です
  • 派生商標(Derivative Mark):イーストマンのコダクローム/KODACHROME、コダカラー/KODACOLOR、コダスコープ/KODASCOPE。(※最近は流行りませんが)

4.個別商品商標の注意事項

  • 特定の意味のない商標(コダック、タバコのキャメル/CAMEL、RCA、GE:これらは宣伝が必要)
  • 暗示的な商標:記憶させやすい。セカンダリーミーニング(使用による顕著性)の立証で登録可能。
  • 説明的な商標:登録できない。しかし、人名が会社組織になり、商標となったケースも多い。ジレットGILLETTE(カミソリ刃)、ジョンソンズ/JOHNSON's(乳児用品)、ウォーターマン/WATERMAN(ペン)。

5.造語商標の作り方

  • 機械的に作る
  • 単語を短くする(remedy→Rem)
  • 人名に短い接尾語を付ける(LISTERINE)
  • 一文字増やす(JELL-O
  • 言葉を重ね合わせる(FRIGIDAIRE)
  • 長い社名を短くする(National Biscuit Company→NABISCO)

6.問題となるマーク

  • 色合標章、芳香商標(※今でいう、色彩の商標、においの商標ではなく、色やにおいに、言葉を付けることのことを言っています)
  • 成分商標(浸透性化学品モノグリコルフェノトキシクロゾーゲン→インフェルトレーション/INFILTRATIONという商標にする。化粧品会社の使い方によっては、普通名称化の危険性。※60年前から成分ブランドの議論はあるようです。)
  • 弱い商標(Weak Mark):ブルーリボン/Blue Ribbon)、プレミアム(PREMIUM)、ゴールドメダル(GOLD MEDAL)、ナショナル、ジェネラル、イーグル。あまりに多種多様な商品に使用され、顕著性が薄い(ダブルアイデンティティだけ抑えられる)
  • 二重商標:デュポンのセロファン/DUPONT Cellophane、バイエルアスピリン/BAYER Aspirin。※ハウスマークと商品商標をセットで表示すると、商品商標が普通名称化する危険性が高まるという話です。萼先生は、折角「French Caramel」という登録商標を持っているのに、Morinaga’s Milk Caramelのように、Morinaga's French Caramelと表示すると商標が弱まるという例を説明されています。

6.望ましい商標

  • 簡潔なこと(コカ・コーラ社→コーク/COKE、バドワイザー/BUD WEISER→BUD、ラッキーストライク→LUCKIES)
  • 覚えやすいこと
  • 読みやすく話やすいこと
  • 宣伝媒体に適応しやすいこと(※当時はラジオを重視)
  • 不適切な意味がないこと(※事前テストでチェックする。戸別訪問、巡回調査で一般大衆の意見を聞く。マーケティングリサーチですね。)
  • 輸出に適すること(不適切な意味。発音のしやすさ。登録可能性)
  • 絵画化に適すること(FOUR ROSESの四輪のバラの絵、SHELLのホタテ貝)。宣伝効果が高い
  • 巧妙であること(暗示的であり、説明的ではないこと。RCAのHis Master's Voiceと犬の絵※ビクターのニッパー犬のことです。顧客が買いたくなる含意がある)

7.新規商標の事前テスト

  • 暗示的商標であるか
  • 不適切な意味がないか
  • 容易かつ長期に記憶されうるか
  • 製品の名称として適切か

これからますます重要に(※ネーミング会社に頼んでも、やってくれますが、一般の意見を聞こうとすると、登録主義ではなく、使用主義が有利です。ある会社が何を使おうとしているか公開することになりますので。)

8.結論(ネーミングの大変さと、知的に選択することの重要性)

 

コメント

非常に良くまとまっていると思います。今でも、十分つかえる内容だと思います。ただ、ネーミング時のマーケティングリサーチは、日本ではやっていると聞いたことがありません。

インターブランドなどにお願いすると、グローバルでのバーバルのネイティブ担当者による受容性調査(ネガティブチェック)を受けることは可能です。

しかし、本当は、商品に張り付けたところを見せて、消費者の意見を聞きたいところです。

登録主義では、出願前に情報が外部に出ることを恐れて、マーケティングリサーチができません。

NDA(機密保持契約)などで、口外しないように義務づけることは可能でしょうが、一般人ですので、無理な面はあります。

 

日本の登録主義の利点として、使用開始前に登録が取れるので、取引の安全が維持されるという説明がありますが、マーケティングリサーチの重要性と天秤にかけると、登録主義のメリットは、デメリットになります。

素直な公平の感覚では、登録主義が良いとはなかなかなりません。