Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標の管理(Trademark management)(その6)

商号

第6章は、商号です。商号に、独立した章を割いているのは、商標も商号もランナム法の対象だからだと思いますし、アメリカの商標の実務家は、弁護士であり、弁理士ではないという面もあると思います。

企業では、商号は、商標と同様に重要ですが、そのあたりうかがえる内容です。

執筆者は、クェーカーオーツ社の社内弁護士です。

 

商標と商号の区別

デルモンテは商標、ジョンソン エンド ジョンソンは商号であり且つ商標でもある。しかし、大部分の商号は、商標としては登録できない語を包含しているとあります。

 

商号の選択

商号は最も貴重な財産となるうるもので、法律的に保護され、他人の名称と混同をされる恐れがない名称を欲するならは、商号は優秀な商標と同様に、簡単で、読みやすく、呼びやすく、記憶しやすく、展示に適したものが有利である。

 

地理的あるいは説明的な名称や、それらの組合せの例は多い。

チーズの会社にとって、酪農の盛んな地方の名称を入れるのは、有利なこともある。

アメリカン」「インターナショナル」は力の大きさを暗示する。

注意すべきは、工場をもっていないのに「工場」を、醸造業を営んでいないのに「醸造」を商号中にいれてはならない。

 

事業の多角化で、「ポンプ エンド マシーナリー」「鋳造」が狭いとして、この部分を省略するために、広告を出した件がある。

 

「フォード自動車会社」「H・J・ハインツ会社」のように、個人名を採用する点については、誰でも自己の姓名を公正に使う限りにおいて、自己の営業に使用する権利があるが、極めてありふれている場合は、同業者にすでに使われているかもしれない。

コダックは造語商標の代表であるが、実は電話帳に載っている姓でもある(Kodak、Kodac)。珍しいものであり、これを避けなければならない理由はない。

 

フィラデルフィア ストレージ バッテリー カンパニー(フィラデルフィア蓄電池会社)が、フィルコ コーポレーションとなったが、商標フィルコが著名になったので、商標を商号に取り入れた例である。

スタンダート石油会社が、モービルを社名に入れようとしている(※入ったのでしょうか?)。

 

商号は、省略されることがある。Indiana Billing(数字記入器) Machine Companyが省略され、IBMとなると、International Business Machines Corporationの商標を侵害することになる。

 

通常、商標調査では、商号も調査対象になる(※コモンローがあるので、調査するのですが、これは企業のブランドマネジメントにとっても非常に良いことだと思います。)

 

商号の侵害

純然たる商号の侵害は、不正競争防止法上の問題であるが、商号が商標と同時に使用されていたり、商号に商標を含む場合は、分離は困難である。

 

電気製品の小売店が「ノースサイド GE アプライアンス ストア」、ピュリナの飼料を販売する会社が「スミス ピュリナ飼料店」とするときがある。

自動車では特約組織があり、自動車の販売店が「サウスショア ビュイック会社」「ヘンナー フォード販売会社」とする場合がある。

このような使用法は、商標あるいは商号のライセンスの形態をとり、十分な保障を立てた契約書によってのみ、可能となる。

 

一つ以上の商号の使用

(※日本ではあまりなかった、社内分社のような考えです)

一つ以上の商号を使用している会社がある。

①事業を買収し、当面継続したい場合、

②事業のタイプが、あまりにかけ離れている場合で、2つの事業が直接関係していると一般大衆に悟られたくない場合、

③その商号では販売が困難な場合(飼料の会社が食料品を売る)などがある。

 

ゼネラル モータス会社のデルコ ラジオ部は、営業部門に一つの名称となっている。顕著性のある名称なので、法人化もしやすい。

 

2級品の販売のため、異なった商号を使用する会社もある。特に海外の独占販売のために異なった商標を使用する会社を創設して、代理店組織を持つ方法である。(※これは、結構、進んだ方法だと思います。)

 

架空もしくは仮の名称

ジョン スミスが、食料品店を「セントラル ストリート グロサリー」の名称で営業するようなケースです。州法で規制があるとあります。

当時のUSTAの会員(企業だと思います)は、あまり、仮の名称は使っていないが、外国貿易のときに限って仮の名称を使うという回答があったとします。(※日本法人も、海外用の社名を持っていますが、それは登記されたものでありません。)

 

コメント

商号は、本当に重要だと思います。

商品・サービスに使う名称が商標で、組織に使う名称が商号と捉ええると良いと思います。登記されている名称にとらわれると、実態が見えにくくなります。

 

日本でも、商標と商号が、同じ顕著性のある名称を共通化する傾向にあります。

商法が会社法になって、類似商号の審査もなくなり、不正競争防止法中心になっていますし、この本にあるように、ハウスマークのような重要商標の調査では、商号もチェックしますが、(類似)商号に見識のある弁理士が全くいないのは、奇妙です。

 

アメリカでは、社内分社があり、日本で子会社を作るようなときも、社内分社で対応したりしますし、カタログなども、社内分社名で出したりします。

日本でも、飲食店業界で、一社で、店舗の名称を変えて、何十種類もの事業をやっている会社がありますが、あの名称は、商標でもあり、商号だとも考えらえます(すかいらーくの、ガスト、ジョナサン、夢庵など)。

 

商号のライセンスについては、WTOのTRIPSでも記載がありませんが、契約に一切がまかされている未開拓の分野です。

 

商号のライセンスや、商号の一部に商標を使用することを認めることは、非常に危険な行為です。

商号は、基本的には、その会社のものとなりますので、資本で押さえられる子会社は別として、ハウスマークは、認めるべきではありません。認めるなら、Quality Controlにと、どまらず指導・監査もしっかりやらないとダメですし、契約の終了、違約金のあたりまで、しっかりやりきる覚悟が必要です。

 

商号と商標の問題は、豊崎先生の時代の論点に見えますが、実は、ビジネス上の活用や、使用実態を含めて考えると、今日的な論点でもあります。