Ⅶ 商標権利者団体とその活動
第7章では、当時の業界団体や、USTA等の業界団体が説明されています。
1.医薬品業協会
この団体には、Trade Mark Bureauがあり、商標の業界登録をしているとあります。協会に商標登録原簿があり、申請によって受付け、商標・商号・造語の商品の普通名称を登録できるようですが、学術名は登録できないとあります。
審査があり、既登録の商標と抵触するときは、通知し、撤回を求めるようです。
連邦登録と異なり、使用予定商標(Proposed Mark)が登録できますが、2年(※放棄=不使用取消の期間と同じ)しても使用開始しないと登録簿から抹消とあります。
また、出願速報のようなものを出しています。
2.化粧品業界(The Toilet Goods Association)
こちらは、自主登録制度までは持っていないのですが、出願速報を発行し、商標情報の整備をし、既存の商標と抵触するときに通知をするとあります。
面白いのは、業界内の全商標のリストを作り会員に提供しているのと、広告の事前審査を行っているということです。
後者は、日本の各公正取引協議会が近いと思います。
3.全国製造者協会
こちらにも特許委員会があり、商標をそこで扱っているようです。
日本の知的財産協会の商標委員会はこちらに該当すると思います。
4.ブランド・ネーム・ファウンデーション(著名商標権者協会)
アメリカ商標協会(USTA)が、法律家の集まりであるのに対して、このファウンデーションは、企業とマスコミ(新聞、雑誌)、広告代理店の団体です。
Trademarkではなく、Brandという言葉が出てきています。この本の中で、はじめて、Brandという言葉をみました。
消費者に「ブランドネームのある商品を買え」、流通に「ブランドネームのある商品を売る」ということを、宣伝し、教育しているようです。商標の3機能など同じことをいっています。
日本の広告主協会(現在は、日本アドバタイザーズ協会)のようなものでしょうか。
この時代から、広告宣伝関係は、ブランドだったんですね。因みに、ブランドは、日本語にすると「印」が近いと思います。もう少し良い日本語が無いものでしょうか?
5.特許弁理士団体
この本で弁理士というときは、弁護士であり、特許の専門家(特許庁の試験をパスしたもの)を指すようです。
6.アメリカ商標協会(USTA)
60年前に設立80周年とあります。ということは、現在140年となります。
当時の事務局長は女性で、現在のINTAの会長も女性です。商標は女性の活躍しているフィールドであると再認識しました。
日本では、商標協会が対応するものだと思います。
ただし、当時USTAの正会員は、企業に限られます。特許法律事務所、広告代理店、デザイン会社は、準会員にしかなれないとあります。
コメント
日本生産性本部のミッションですが、当時の通産官僚なども一緒に参加しているのは、業界団体の機構の把握も、目的だったと思います。
業界の自主登録
今は、どうか分かりませんが、日本にも意匠の業界の自主登録があったと思います。特許庁や図面作成の料金が高いから、業界で内々に登録していると理解していましたが、アメリカでは権利は使用によって発生しますから、業界の自主登録にも十分意味があると思いました。
Intent to useが出来たので、利用価値は下がっていますが、自主登録というのは、登録制度の本質をついています。ドイツのように国家の登録を設権行為と考えると方が異端です。
日本の不動産登記では、ベースがフランス法なので、登記に公信力がなく、公信力のあるドイツ法の明確性に憧れがあり、商標制度に影響していると見ていますが、使用主義の不正競争防止法との整合性がついていません。
なぜ、この点を議論しないのかは不思議です。
USTAの構成
現在の会長のTish Berardさんも、弁護士でローファーム経験がありますが、Hearts On Fireという宝石会社(今は違う会社)の企業の法務部長出身の方です。
基本的に企業の集まりであり、そのTOPは、企業の法務部長がつくという考えが、INTAの伝統としてあるのではないかと思われます。
ここは、重要です。USTA=INTAが力があるのは、これが理由だと思います。反対に日本商標協会は、ここを重視する必要があります。
昨年から商標の世界に戻ってきて、日本商標協会の部会や委員会に出ましたが、日本商標協会のTOPは弁理士ですし、部会や委員会も、企業出身者の部会と弁理士・弁護士の部会にパキット割れていますし、融合は出来ていません。
企業で商標に明るい適任者がいないのが課題なのでしょうが、商標協会のTOPを企業出身者にすることと、知財協会の商標委員会を全部引き取るぐらいの覚悟がないと、いつまで経っても、商標協会がINTAになれないような気がします。
私の世代には、企業の弁理士は極僅かなのですが、これからの世代には、比較的沢山、弁理士さんがいますので、彼らの中で法務部長クラスになる人が出てくると良いなと思います。
商標協会が出来たとき、知財協会内部では、商標協会には協力しないという議論があったのですが、そういう時代でもないと思いますし、アメリカは、今でも進んでいると思いました。