Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

JIPA商標委員会の勉強会

武田グローバル本社で


2018年11月2日に、日本知的財産協会(JIPA)の商標委員会の勉強会があり、一時間ほどお話をする機会がありました。そのあと、1時間ほど、参加者とディスカションするという勉強会です。
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本社の横に、福徳神社があります。
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●しばらくの間、このブログで書いていた、「商標の管理」(日本経済新聞社)や「商標管理」(日本生産性本部)は、そのための事前準備のためです。

 

●商標委員会は約20年ぶりです。以前参加していたときは、20代後半から30代前半の時期で、若手として参加していたので、隔世の感があります。

当時と比較すると、若い方と女性が多くなっているのと、サービス業の方が、多くなっています。

 

●依頼を受けたテーマは、「商標担当者のプレゼンス向上とキャリア形成」だったのですが、サブタイトルを「商標管理(Trademark Management)」の復活」としました。

ちなみに、商標担当者の幸せとは?というのが、検討課題としてあるようです。

 

●最近の電機業界を念頭に、ブランドマネジメントと商標管理が分離してしまい、60年前にアメリカのUSTA(INTA)の商標関係者から学んだ状態と違い、適正使用管理(ブランドマネジメントがやっています)や商標ライセンス時の監査をやらない商標管理となっており、それはいかがなものか、という視点で、「商標管理の復活」とサブタイトルに決めました。

 

●商標調査・商標出願などの権利確保や、更新は、基本的になものではありますが、ここは、特許事務所に外注も可能な部分ですので、これだけに注力するよりは、企業にとって重要な適正使用管理やランセンス監査をした方が、ブランド価値低下を防止し、ひいてはブランド価値向上のために、有用と思います。

 

●2000年以降に、ブランド論が盛んになり、経営学的なブランド用語が企業に入ってきました。この流れは止めらません。ブランド用語は、ビジネスの標準語になっています。

過去、商標と言っていたものが、ブランドという言葉に置き換わっています。

これについては、将来的には、商標用語とブランド用語の統一が必要と思います。

先週、中華商標協会の訪日団があり、弁理士会商標委員会のメンバーとして受け入れの場に参加しました。中国では、「商標品牌」というように、「商標」と「ブランド(品牌)」をセットで使うことが多いように思います。このあたりから、やり直さないと、商標管理は復活しないと思っています。

 

●広報宣伝部門に、ブランドマネジメントがありますが、宣伝や広報に重きがあり、適正使用管理やライセンスなどの、ブランドマネジメントは、二の次、三の次になりがちです。

 

ブランドマネジメント部門も、商標部門の助けを必要としていると思います。今一度、商標部門とブランドマネジメント部門の完成を再構築して、模倣品対策などのその他の業務とともに再構成すべきというのが、云いたかった内容です。

 

●更新の使用証拠収集がなくなったのは、適正使用管理という業務から、商標部門を遠ざけたものであり、商標管理を決定的に低下させたものと考えました。これによって、使用管理の足場を失いました。

対策としては、アメリカのように使用宣誓を導入してはどうかなどを提案しました。

 

●他には、米国流に、ライセンスにQuality Controlを入れる(品質管理をしていない権利は無効となります)ことも提案しました。

こちらは、ライセンスの仕組みや監査に商標担当者が大きく関与するための足場になります。

 

●付与後異議を付与前異議にすることについては、異議申立は「商標の華」ですので、これを阻害している要因は、徹底的に廃除する必要があります。一番には、異議に勝つパーセンテージの低さです。これでは誰も異議をしなくなります。

ここは、付与前異議に戻すか、特許庁が、中国程度の数字を目標に異議申立する方を勝たすかの方法がありますが、数値目標を作れないと思いますので、付与前がましだと思います。

意見の分かれるところです。

 

●議論になったのは、電機業界が念頭にあったので、商標部門の地位が低下していると認識していたのですが、この点は、違う意見もありました。最近は会社の中でも特許よりも商標が重要といわれているということです。

確かに、BtoBの企業では、広報宣伝の力はそれほど強くなく、適正使用管理もこれからという企業もあるでしょうし、商標部門がブランドマネジメントの実務自体をやることになる会社も多いだろうと思いました。

 

●他の意見しては、「商標の力」を議論したいというものがあり、これは「ブランドの力」の話だと思います。概念的な商標機能論ではなく、ブランドのパワーの問題であり、どのようにすれば、商標の力を最大限に発揮できる(活用できる)か、そのために何をすべきか、何ができるか、成功例、失敗例をもとに、実践的なプロセスを考えるもので、ブランド学者のケーススタディを、咀嚼し、自社に一番良いように適用することが必要と思います。

 

●最後に、以前からの知り合いの方に、各所に面白いところはあったが、法改正よりも、要は個人の熱量の問題ではないか?という指摘ももらいました。そうかもしれません。

 

何はともあれ、久しぶりに、商標担当の皆さんとお話しをする機会を得て、うれしく思います。感謝しております。