Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

PENの販売台数の誤り

そんなこともあるのか

2018年11月14日の朝日新聞で、オリンパスのPENのこれまでの累計販売台数が誤って集計されていたという記事を読みました。

  • フィルムカメラ「PEN」シリーズの全世界での販売台数を誤って公表
  • 1959年から27年間で、1700万台としていたが、800万台と訂正
  • 創業100周年の資料整理で発見
  • 集計を誤った理由は不明
  • 2009年からミラーレスでこの名称を復活

とあります。

 

オリンパスのWebサイトにも、この情報は載っていました。

ニュースリリース数値誤りに関するお詫びとお知らせ:2018:ニュース:オリンパス

 

過去のミラーレスの2つのニュースリリースを修正し、お詫びをするととともに、次の訂正があります。

ハーフサイズカメラ「PENシリーズ」全世界で1700万台販売(誤)
ハーフサイズカメラ「PENシリーズ」全世界で800万台販売(正)

 

コメント

この記事を見て、まず、オリンパスは正直だなと思いました。

 

そもそも、1700万台と800万台という数字だけを見ると、やはり1000万台という大台を超えている1700万台が大きく見えますが、800万台という数字も十分大きな数字であるだけに、これでも十分だったような気もします。

 

朝日新聞には、なぜ、間違えたのかは、オリンパスでも不明とあります。ミラーレスのPENを販売するときに、過去のフィルムカメラのPENの数字(そのときは既になかった=1986年まで)を調べたときにミスがあったということなのでしょう。

 

ホンダのスーパーカブなど、1億台突破などは、発売60周年や新製品発表などと組み合わせて、非常に上手なプロモーションにもなっています。

www.honda.co.jp

 

スーパーカブは、ずっと生産が続いているので、担当者がいるために情報の散逸がないに比べて、オリンパスのPENの名称は1986年に一旦終了し、2009年に再開ということですので、その間23年も経っています。

カメラ事業はずっとやっているので、資料などは、会社のどこかに残っているでしょうが、PENの担当者はもう誰もいなかった可能性があります。

この点、スーパーカブとの違いがあるのかなと思いました。

 

フィルムカメラのPENは、ハーフサイズカメラと呼ばれ、同じ35mmフィルムでも2倍の枚数を撮影できということで人気があった製品ということです。

800万台の2倍撮影でるので、1600万台分ということは言えなくはないようにも思いますが、まさかそれが理由ということはないと思います。

 

この記事に興味をもったのは、旧英国法系の国の商標出願では、商標の先天的登録性(日本の識別力、識別性とほぼ同様)が厳しいのですが、すぐに使用による登録性の獲得を実証するしかないとなり、現地代理人から、販売金額や販売台数、過去の広告金額、実際広告、インボイスを出せといわれることが多く、日本企業はこれらの保管が出来ていないため、提出できないことが多いのではないかと感じています。

特許の発明ノートではないですが、商標の場合は、使用実績をきっちり残すという習慣が必要ですが、その方法論が会社など日本の組織に根付いておらず、日本中の商標担当者が困っていると思います。

 

もし、日本の商標法も、もう少し、使用を重視する法制であれば、使用証拠の収集・保管が、社会全体の習い性となり、使用証拠が集まる国になったのではないかと思っています。

 

更新時の使用証拠提出がなくなって20年経ちますが、そろそろ使用証拠に向き合う時期ではないかと思います。