Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許の価値評価と商標の価値評価

三菱電機が首位(4年連続)

2018年11月8日の日経(夕刊)で、パテント・リザルト社の2017年度の特許価値評価のランキングの記事が掲載されていました。

www.nikkei.com

  • 2017年度の国内で登録がある特許の価値を評価
  • 早期審査の件数、無効審判や異議申立の件数、拒絶理由として引用された件数などから指標化
  • 三菱電機パナソニック、キャノン、トヨタ自動車クアルコム、ホンダ、リコー、富士フィルムセイコーエプソンコニカミノルタという順位
  • 1位の三菱電機は、特許の数が4471件と最多。その多くについて早期審査を請求して、権利行使できる期間を長くする戦略
  • 自動車の安全運転技術の評価が高い
  • 他に直流電流の変換技術
  • 2位のパナソニックは、映像の信号処理技術、特許の件数は3067件と少ないが、競合他社から異議を申立られた件数が多く、注目度が高い技術が多い

コメント

パテント・リザルト社の特許の価値評価は、4月から3月末までを期間として、その間の保有権利をベースに、その1件1件についての、早期審査の件数、無効審判や異議申立の件数、拒絶理由として引用された件数など(注目度スコア)から指数を出して、計算しているようです。

 

パテント・リザルト社のWebサイトによると、

特許1件ごとのスコアに、特許失効までの残存期間を掛け合わせ、企業ごとに合計得点を集計しています。

注目度スコア算出には、特許の出願後の審査プロセスなどを記録化した経過情報などを用いています。出願人による権利化への意欲、特許庁審査官による審査結果、競合他社によるけん制行為などを指数化することで、出願人、審査官、競合他社の3者が、個々の特許にどれくらい注目しているかを客観的に評価しているとあります。

【全業種】特許資産規模ランキング、トップ3は三菱電機、パナソニック、キヤノン | 特許分析のパテント・リザルト

 

経過情報だけで特許の価値がわかるのか?という点はありますが、客観的指標としては悪くないと思います。

 

また、このランキングは、保有権利を見ているので、一年で大きくアップダウンがありません。三菱電機が4年連続で首位とあります。

1年で順位が大きく変動するランキングものもありますが、全体の価値評価が単年度であまり変化することはないと思いますので、理解しやすいランキングです。

 

海外でも同じように評価できれば、その企業の真の特許の実力が出ますが、あくまで国内の感じです。そのため、外国企業はクアルコム一社しか出てきていません。

 

さて、特許は、これで良いとして、もし、仮に商標で同じような、商標の資産価値のランキングを作るとしたら、何が指標にできるのか、考えてみました。

 

異議を指標に入れるなら、異議申立てを掛けられた件数ではなく、かけた件数です。後は、模倣品対策件数でしょうか?ただ、これらは、商標部門の活動の評価指標にはなりますが、商標の価値とは違います。

 

商標価値=ブランド価値ということになると、インターブランド社のブランド価値評価のようなものになります。これがあるので、パテント・リザルト社も商標の指標は出していなのかなと思います。

 

ただ、このタイプのブランドの価値評価は、荒っぽく考えると、株式時価総額-有形資産=無形資産であり、無形資産-特許+ノウハウの価値=ブランド価値、ということになるのですが、

当該企業が複数のブランドを持っている場合、その各々のブランドで、売上や利益やイメージ評価が出来ていないと算出でません。

また、事業ブランドのレベルの商標とプロダクトネームのレベルの商標関係もあります(ただし、プロダクトネームには資産価値は、認知は高くても、案外、低く算出されるように感じています)。

 

30年前に、上司から知財の価値は、3分の2は特許で、3分の1は商標と言われたことあるのですが、このブランド価値評価的に考えると、特許と商標の価値は、大きく逆転するのだと思いますが、特許の金銭価値評価を見たことがないため、正確には分かりません。(会社によっても、違います)