財務省がDCF法で
2018年11月9日の日経に、財務省が知的財産権を税率の低い国に移転して節税する行為の対策を強化するという記事がありました。
- 日本の本社と海外子会社との取引を規制する移転価格税制を見直す
- 税制調査会で決定。来年の通常国会に提出したい
- 知財の価値を安く、海外子会社に売ると、売却代やその後の知財収入の課税負担が軽くなる
- 移転価格税制を活用して、妥当な価格に算定しなおす
- 特許などでは市場価格は存在しない
- 財務省は、親子会社間の譲渡の適正価格をを出す方法を、法律で規定する
- ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法、将来得られそうな利益からリスク要因を割引、価格を計算する方法)を認める
- 事後的に価値の変動があった場合は、調整できるようにする
- 経済界には、慎重論が根強い。DCF法で移転した場合に限り、DCF法を適用する
とあります。
コメント
税金のことなので、十分に理解できていません。その前提で、
100億円の価値のある知財を、50億円で海外子会社に譲渡すると、イニシャルでは、収入が少なくなりますので、所得税が安くなるのだと思います。
そして、この50億円の権利に基づく、ランニングで入ってくる収入は、海外子会社の収入になります(その国の税制で所得税がかかります。日本には所得税は入ってきません。所得税の安い国に権利を置いて、ライセンス子会社を設立すると、ランニング収入の所得税が安くなり、結果として多国籍企業のグループ全体に残る資金は多くなるはずです)。
この点、本来、100億円の価値のあるものを、100億円で売ったのであれば、それは移転価格税制上は、何も問題ないように思います。
しかし、当初は、50億円ぐらいと思っていたものが、実は、大化けし(オプジーボのようなものを想定して)、100億円の価値があったとすると、海外子会社には、収入もそれに見合った金額が入るので、結果論からすると、安く売ったことになります。
今回の話は、この点についてのもので、価値があることが後から判明したようなケースにおいては、実際の現在価値を割り出して、当初の売却金額が不当に安かったことにしようというものと理解しました。
そうなると、イニシャルの所得税分が追徴課税されるはずです。
ただ、毎年のランニングで入ってくる所得税は、日本よりも所得税率の低い国であれば、税額が減り、企業グループに残る資金は、増えるのではないかと思います。
この点は、メリットが残るので、やはり、知財は海外に置くのが得策という気はします。
また、権利移転までせずに、サブライセンス付きのライセンスを、所得税の安いどこかの国(アイスランドや、シンガポールなどの子会社)に与えて運営すると、譲渡ではないので、この議論はあまり、関係ないのかもしれません。
あのトヨタが、法人税(所得税)を5年も支払わなくて良かったようですので、日本では、この種の議論があまり出ていませんが、製薬会社などで、本当に儲かっている会社が出た場合は、知財の海外移転は、真剣に議論される内容だと思います。