最高裁に二審を一元化
2018年11月30日の日経に、中国の知財裁判制度の改善についての解説記事がありました。
- 2019年1月から、特許など技術系の裁判について、最終審である二審を最高人法院(最高裁)に集約
- 判断のバラつきを防ぐ
- 地域保護主義が強いので、それが改まる効果も
- 中国の知財紛争は、2017年で、年間23万7千件。日本の25倍
- 現在は、一審は各地の中級人民法院(地裁)や北京など3か所にある「知的財産専門裁判所」。二審(確定判決を出す)を、各省の高裁が担当
- 最高裁は、再審を主に担当
- 今後、最高裁の処理する知財訴訟は、5千件程度になる。判事は、50人~100人必要。現在は、20人だけ
- 中国の知財訴訟の8割の、著作権や商標権は、引き続き二審を高裁が担当
とあります。
コメント
中国の知財の裁判数が、23万7千件ということで、日本の25倍とあります。
ということは、割り算すると、日本では、9,480件の知財訴訟があるはずです。
先日、中華商標協会が来日されたとき、弁理士会が受け入れを担当し、そのとき、知財高裁の訪問という行事がありました。知財高裁のパンフレットをもらったので、それには、統計が載っています。
2017年の知財高裁の新受の数字ですが、審決取消訴訟は236件、民事訴訟は105件で、小計341件。
そして、全国の地裁の知財関係の民事は692件。全国高裁の知財の民事は131件。小計823件です。
合計すると、1,164件です。最高裁や刑事はそれほど多くないと思います。
良くは分かりませんが、この数字からは、25倍ではなく、204倍ぐらいになります。
25倍の数字は、どのように出したものなのでしょうか。(どこかに私の計算ミスがあるのかもしれませんので、ご了承下さい。)
中華商標協会が知財高裁来訪時に発言されていたのは、受理件数で21万件、刑事は2万4千件と聞きましたので、合計すると、23万4千件で、新聞にある、23万7千件に非常に近い数字ですので、こちらは、だいたい正しい数字だと思います。
25倍程度なら、人口が10倍とすると、国民一人当たりで換算すると、実質は2.5倍で、多いなと思う程度ですが、実質で20倍となると、相当多いという感じがします。
日本では裁判が少ない。一方、中国では裁判が多いというのが、現状のようです。
原因は、審決取消訴訟については、日本では行政に対する評価が高く、その判断(審決)に不服申立をするのが、憚られるという点があると思います。
また、民事では、日本では話合いで解決することが多く、裁判で判断されることを好まないことが原因と思います。
中国の若手弁護士と話をしていたときに、言われたのは、裁判というのは、どちらかが勝ったり負けたりするものであり(当然そうです)、勝率は平均すると50%になる。
裁判は、そもそも紛争を解決するための制度として準備されているものであり、どんどん活用すべきという趣旨のことを言っていました。
このあたりの法律の感覚は、日本人よりは、アメリカ人に近いように思いました。