2018年12月5日、アサヒグループホールディングス(アサヒビールの親会社)が、新たにグループ理念を制定したというニュースリリースがありした。
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アサヒグループホールディングス株式会社が、従来の経営理念を刷新。新グループ理念“Asahi Group Philosophy”を制定。2019年1月より施行
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経営理念や各種ビジョンを継承しつつ、世界中のグループ社員や全てのステークホルダーにとって、より分かりやすく共感できるグループ理念を再構築
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全世界のグループ社員が、ベクトルを合わせていくことにより、成長と企業価値の向上
- Mission、Vision、Values、Principlesで構成
- グループ経営における最上位の理念。各種ビジョンやポリシーに反映。国内外の事業会社は、新経営理念に基づいた戦略を策定・実行。グループ一丸に
そして、具体的には、
- Our Mission:社会における使命・存在価値
期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造
- Our Vision:アサヒグループのありたい姿・目指す姿
高付加価値ブランドを核として成長する”グローカルな価値創造企業”を目指す
- Our Value:ミッションを果たし、ビジョンを実現するための価値観
挑戦と革新、最高の品質、感動の共有
- Our Principles:ステークホルダーへの行動指針・約束
顧客:期待を超える商品・サービスによるお客様満足の追求
社員:会社と個人の成長を両立する企業風土の醸成
社会:事業を通じた持続可能な社会への貢献
取引先:双方の価値向上に繋がる共創関係の構築
株主:持続的利益成長と株主還元による株式価値の向上
となっています。
コメント
アサヒグループホールディングスの新理念で、アサヒビールをはじめ、国内外のグループ各社の共通理念になるようです。
Mission、Vision、Valueの整理で、非常に分かりやすいので、海外の方にも高評価なのではないでしょうか。
ちなみに、アサヒグループHDでも、アサヒビールでも同じなのですが、現在の経営理念は次のようになっています。
アサヒグループは、
最高の品質と心のこもった行動を通じて、
お客様の満足を追求し、
世界の人々の
健康で豊かな社会の実現に貢献します。
そして、コーポレートブランドステートメントは、
「その感動を、わかちあう。」
とあり、
いつも新鮮な価値を想像することが
人のこころを動かして、強い絆となる。
いつも新鮮な明日を想像することが、
人のこころを動かして、耀く力になる。
そんな感動を、ひとりでも多くの人々をわかちあいたい。
それが、わたしたりアサヒグループの願いです。
とあります。
ニュースリリースからは、来年1月からは、この経営理念が、新グループ理念に切り替わると読めます。
グローカルなど、海外のM&Aしたブランドに配慮した内容です。
ちなみに、現在の経営理念と、コーポレートブランドステートメントは、非常にスーパードライを意識したものです。スーパードライで大成功した会社ですので、そのイメージを大切にし、その延長上で企業のベクトルを合わせていたのだと思います。
コーポレートブランドステートメント「その感動を、わかちあう。」も、スーパードライの宣伝に、そのまま使えるものであり、その説明文は、非常にコピー的です。
(今のところ、新グループ理念なリリースには、従来のコーポレートブランドステートメントがどうなるか記載がありません。そのDNAは、Our Valueの中の「感動の共有」に入っているので、継続することもできますが、従来のコーポレートブランドステートメントは、企業の一面を切り取って強調したものなので、ブランドのタグラインか、ブランドスローガンぐらいと整理すべきかもしれません。)
全体に、これまでの整理が、スーパードライの一本足打法だったので、より普遍的なものにしたという感じです。
個性は、これまでの整理の方が上ですが、最近好調なNIKKAであるとか、海外のM&Aした各種のブランドのことを考えると、Mission、Vision、Valueというスキームでの今回の整理は、非常に分かりやすい整理であるように思いました。
以前、シスメックスの話を聞いたとき、会社の海外比率が高まると、海外の従業員に理解されやすいように、企業理念やブランドの考え方などを再整理し、欧米流にする必要があり、それは会社を飛躍的に大きくするのに、役立ったと聞きしました。
今回のアサヒグループHDの整理も、相当、この意味で有用なのではないかと思いました。
Valueが企業の個性を表しますが、「挑戦と革新」はスーパードライというカテゴリを作ったこと、「最高の品質」は鮮度へのこだわり、スーパードライを想像すると直ぐにイメージできたのですが、「感動の共有」は、落合信彦、福山雅治さんのCMはイメージした程度です。
非常に宣伝的な発想の言葉で、どのように考えると、Valueになるのか、もう一歩、説明が必要だと思います。
従来のコーポレートブランドステートメントの説明文を読むと、スーパードライという新しいものを作り、お客様との絆を作った。これは、人のこころを動かしたという得難い経験であり、その感動を分かち合いたいと読めます。
どんどん、スーパードライのような成功を積みかさねたいという意識があるのかもしれません。
社員にはっぱをかけるための魔法の言葉と理解しました。
「感動の共有」が、アサヒグループHDのブランディングの一番のドライバーだと思いますが、相当、コンテクストを知らないと、理解が困難です。
私は、食なりお酒なりといったものは、一人で飲食するものではなく、家族や友人と語らいながら飲食するというもので、コミュニケーションと切り離せないものであり、そのあたりが「感動の共有」という言葉と関係するのかと思いましたが、コーポレートブランドステートメントを読む限り、違うようです。
結局、Valueの中には、スーパードライを核とした、従来の経営理念、ブランドステートメントが色濃く残っています。これを、海外の方に理解してもらうためには、相当丁寧な、ブランド研修が必要だと思いました。
Asahiがどんなブランドになっていくか楽しみです。