パワハラ防止が企業の義務に
2018年12月15日の朝日新聞に、パワハラ防止策に取り組むように企業に義務付ける報告書を、厚生労働大臣の諮問機関の分科会がまとめたという記事がありました。
厚生労働省は、来年の通常国会に関連法案を提出するとのことです。
- 全国の労働局への労働相談で、パワハラ・嫌がらせは、約7万2千件と15年連続増加
- パワハラの定義は「優越的な関係に基づき、業務の適正な範囲を超えて、身体・肉体的苦痛を与えること」
- 企業の防止策は、指針で。具体例としては、加害者への懲戒規定をつくる、相談窓口を設ける
- 7年も時間がかかったのは、どんな行為がパワハラか線引きが難しいとの指摘があったため。パワハラと業務指導との線引き
- パワハラの定義では、例えば、優越的な関係は、加害者が同僚や部下でも、被害者より業務経験が長かったり、集団による行為だったりするとパワハラに
- 6類型について、実際の企業での事案をもとにした判断事例集をつくる
- パワハラ行為自体の禁止規定なし。悪質なケースは刑法で対処
- ただし、パワハラは許されないものとの考えは入れる
コメント
2018年10月頃の新聞の議論では、まだ、法制化かガイドライン(指針)に止めるべきかが議論されていました。
今回の記事によると、法制化とガイドラインがセットになるようです。
おそらく、パワハラの一般的な定義や、企業への防止策の義務付けは法律になって、具体的なパワハラの類型、具体例などは、ガイドラインに譲るのだと思います。
労働相談は、1年間で、7万2千件もあるようです。これだけ事案があれば、分析することで、基準ができそうなのですが、裁判例がそれほど多くないのために、分析が進んでいないのかもしれせん。
新聞記事で興味をもったのは、同僚や部下からの嫌がらせ、いじめなどもパワハラになると記載がある点です。
厚生労働省の資料に、事例が紹介されていました。6ページにあります。
http://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf
上司だけの問題ではなく、同僚や部下の問題、職場全体の問題であるという指摘は面白いと思いました。
単なる肩書上の上司、部下という関係ではなく、実質的なところを見るんだなと思いました。
ちなみに、朝日新聞に記載されていた、パワハラの定義ですが、「優越的な関係に基づき、業務の適正な範囲を超えて、身体・肉体的苦痛を与えること」という定義ですが、公正労働省のWebサイトなどでは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいうとあります。
朝日新聞には最後の部分がありません。
この「職場環境を悪化させる行為」とは、職場全体からの視点ではなく、被害者が職場に居辛くなる、すなわち、被害者からの視点をいうようです。
もともと、パワハラは、離職に追い込まれる点が、問題のスタートだと思います。その意味で、この「職場環境を悪化させる行為」という言葉に意味がありますが、朝日新聞は、記載していません。
単に、長いので、短くしただけなのか、諮問機関の分科会で、明示的に削除されたのかは、不明です。
個人的見解として、この「職場環境を悪化される行為」という文言は、明確に「被害者の職場環境を悪化させる行為」と一言修正すべきと思いました。