Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

パテントの「スポーツと知財」特集

アシックスの知財部長の論文

2018年12月号の「パテント」に、アシックスの齊藤部長の論文が掲載されていました。

まだ、Web上に公開されていないかもしれませんが、数か月の内にはネット上で入手が可能になりますので、是非、読んでもらえればと思います。

 

アシックスでは、このような知財面でのPRにも力を入れており、各種講演会にも頻繁に出ておらるようです。

ブランド作りのために、知財部長が率先して、やっておられる良い事例ではないかと思います。

 

さて、論文は、

  1. アシックスの歴史
  2. アシックスの知的財産
  3. アシックスの知的財産部門
  4. グローバル化への対応
  5. ブランド保護活動
  6. スポーツを支えるアシックス知財の取り組み

などとなっています。

パテントという雑誌の特性(対象が弁理士さんや知財関係者)から、知財業界の人に、広くアシックスそのもの、アシックスの知財(特許、意匠、商標など)を理解してもらい、更に最近手掛けている、グローバル化対応、ブランド保護活動などを説明するという構成です。

 

約1年ほど前に、商標協会の講演では、特に、5.ブランド保護活動を中心にお聞きしましたが、今回の論文はそれ以外の部分を充実されている感じです。

以前の講演のときの感想は、次です。 

nishiny.hatenablog.com

 

今回、論文を読んで、個人的に面白いとおもったのは、次のような4.以降の後半部分ですが、特に、グローバル化対応の部分です。

  • 社内外での、知財活動のアピールを重視
  • 難しい知財用語を咀嚼して、受け取り手の目線でコニュニケーション
  • グローバル化で、販促媒体が英語ベースに
  • デジタル化で、媒体の入れ替えが早くなる
  • 知財チェックは、ボリュームとスピードの時代に
  • 声のかかる知財部門を目指した、知財教育
  • 経営幹部にも、模倣品を第1世代、第2世代、第3世代に分けて、分かりやすく説明し、理解を得た
  • スポンサーシップでは、ブランドロゴの露出を効果的、印象的になることが重要。これには、事前の知財チェック
  • 社外の知財サービスの活用。社内は社内でしかできないことにフォーカス(調査、分析、企画、提案)
  • スタッフへの社内外でのプレゼン機会提供。自信をもつ

 

コメント

模倣品は、昨年お聞きしたことと変化はないようです。

上に赤字で書いた、グローバル化、デジタル化で、販促物等を海外ですることが多くなり、その更新頻度があがり、それに対応しないといけないというのは、面白い話だと思いました。

 

海外のことは海外に任せていると、収拾がつかなくなります。Black Boxの塊になってしまいます。

一方、海外のこともすべて日本の事業部門から知財部門に相談が上がってくるようにすると、中間に入る人がいるため、時間やコストがかかります。

具体的にアシックスがどのようなことをやっているか良くは分かりませんが、海外で生まれる販促物等の知財チェックを、現場まかせではなく本社の知財部門が積極的に関与しつつ、ボリュームのある調査量を、スピーディに対応していくというのは、面白い取り組みだなと思いました。

 

商標の予算を本社知財が持っていることがポイントになるのか、本社知財の卓越した知識・見識がポイントになるのか、良くは分かりませんが、海外の現場とのコミュニケーションの取り方が重要だろうと思いました。