ECサイトを通じた各国での拡散
パテントの「スポーツと知財」の続きです。本日、読んだのは、ヨネックスの法務部知的財産課の弁理士さんの「模倣品撲滅への取り組み」というタイトルの論文です。
ヨネックスの会社の説明、事業の説明、代表的な技術(ブランド)の説明、模倣品対策の説明と続きます。気になったところをピックアップすると次のようなところです。
ヨネックスといえば、バトミントンです。バトミントンは、中国およびアセアン諸国で非常に人気があり、インドネシアやマレーシアでは国技であり、ブルネイでは王室や大臣などがバトミントンの愛好家のようです。
模倣品対策では、真贋鑑定が容易になるように、ヨネックスでは特殊な技術で製造されたシールおよびラベル「真贋判定シール」「真贋判定ラベル」を採用し、特定のビューアをかざすことでそのシールの見え方が変わるもので、単にラベルの外見を真似ただけのシールを簡単に識別できるとします。
各国の模倣品取締担当者などにも好評で、ビューアを欺くものはまだ出ていないそうです。
さて、この論文でも、特に面白いと思ったのは、後半のインターネット上の対策です。
積極的な対策が功を奏して、すでに中国では、リアルな店舗で、ヨネックスの模倣品を見かけることは少なくなり、代わりに、インターネットのECサイトにシフトしているとあります。
中国では、大手以外のECサイトが活況を呈しており、これから関係を作る必要があるのと、SNSを介した販売があり、会員制のグループチャットで模倣品の売買があるそうです。
そして、これらの販売サイトから、中国以外の国へ模倣品が拡散しているそうです。同社は、アセアン諸国で人気があり、そちらに出回っているとあります。
模倣品対策も、制度が異なり、税関登録一つとっても、制度の有無、登録要件、効果に大きな差があり、日本のように行き届いた税関の対応は期待できないのが実情とします。
また、アセアンのECサイトも勢いがあるそうです。
中国中心の時代から、各国の調査会社、代理人の協力を得る時代になっており、JETROや知財協の協力が重要としています。
コメント
インターネット販売を通じて、日本にも沢山の模倣品が流入してきているのが問題だと思っていました。先日、A社で購入したmicro SDカードは、サイトで見た時は、ブランドがあったのに、実際に送られてきたものはブランドがなく、A社に電話したのですが、送り返せば返金するということでした。
その会社の知財の方を知っていたので、見てもらったところ、模倣品とのことでした。最大手のA社でさえ、模倣品は沢山出ているんだなと実感しました。
この論文を読んでいて、インターネットの普及は、日本のみならず、海外でも影響が出ているということを改めて理解しました。
当然と言えば当然です。これだけ流通機構がしっかりしている日本でも、ネット上には模倣品が溢れているのですから、海外ならもっとありそうです。
ブランドが人気のある地域で、模倣品が出るのは当然です。バトミントンの人気の高いアセアン諸国に、製造国である中国からの模倣品が流入し、その対策を取る必要があるというのは、良く分かります。
模倣品対策は、企業が現地の調査会社や弁護士、行政機関と直接仕事をすることが多く、弁理士が参画できていない部分です。
一番大きな障害は、スピードです。書類を中心に、数か月の期限がある期限ものになれた弁理士のスピード感と、一日、一時間をあらそう模倣品対策のスピードの違いがあるように思います。
税関登録ぐらいは問題ないとして、税関で模倣品が発見された後のフォローが、特許事務所の時間軸とは異なります。
チャット的に、e-mailを使用し、CCに企業の人を入れて、企業の一員のように動くことは可能なのですが、これをやると、日常業務ができなくなるので、特許事務所は積極的にならないのだろうと思います。
しかし、対庁の手続きだけで、このようなビビッドな仕事をしないのは、弁理士の姿勢としては、問題があるように思います。奈良の大仏商法と同じです。
また、税関登録も、日本の事務所を経由すると、その費用がかかるので、どうせ英語でやるんだからと、企業は直接、各国の調査会社や代理人に頼むことになりそうです。
ただし、このあたり、企業の模倣品対策の方も、働き方改革で時間がないので、税関登録とその後の対応などを中心に、特許事務所が切り込むチャンスがあるように思います。