Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ガソリンスタンドのブランド

出光昭和シェル

2018年12月18日に、出光と昭和シェルの共同のニュースリリースで、昭和シェルとの合併に関する、株式の交換比率が株主総会で承認されたというものがありました。

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1657071

2018年7月10日のリリースで発表されていたことが、前に進んでいるようです。

7月10日のリリースを見ると、次のような記載があります。

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1609344

  • 株式交換の効力発生日は、2019年4月1日
  • トレードネームは、 「出光昭和シェル」 とす る予定。なお、国外でのト レードネムを含め実際の運用については両社で別途協議し決定
  • 既存ブランドの取扱いは、経営統合後の一定期間は、両社の既存ブランドを併用

とあります。

 

コメント

出光と昭和シェルの合併は、出光興産の創業家からクレームがあり、ギクシャクしていたようですが、結論としては、前に向かって動いているようです。

ニュースリリースが、商号のことをトレードネームと表現している点は、日本語と英語で差のないリリースを出すんだろうなという感じがしたのですが、単に、英語を使っただけなのか、どちらにしても、グローバルな事業なんだろうなと思いました。

 

「trade name」を「商号」と訳しますが、「営業上の名称」という方が正確なのかもしれません。

なんとなくなのですが、「trade mark」(営業上の標識・標章)と「trade name」(営業上の名称)には、日本語における差よりも、もう少し、重なった、滲んだものであるように感じています。

 

さて、本題は、統合後の一定期間は、既存のブランドを併用するというところです。

昔は、沢山あった、石油会社のブランドがどんどん減っています。車で道を走っていても、ガソリンスタンドを見つけることが難しくなりましたし、古いカーナビの地図にあるガソリンスタンドが無くなっていることも多く、ガソリンスタンド業界は大変なんだろうなと思います。

 

ENEOSを展開する、JXTGホールディングスのWebサイトを見ると、同社のガソリン販売のシェアは1位で、50%とあります。

エネルギー事業|事業紹介|JXTGホールディングス

そして、リンクが張ってあるJXTGエネルギーのサイトには、

現在は、ENEOSとエッソ・モービル・ゼネラルがあるのですが、「エッソ・モービル・ゼネラル」は2019年7月までに順次「ENEOS」に変わるとあります。

決済ツールご利用状況のご案内|JXTGエネルギー

 

国内1位の50%のシェアのガソリンスタンドが、ENEOS一本になるようです。

 

残る50%を、出光、昭和シェル、コスモで分けているようです。

 

昔は沢山、ガソリンスタンドのブランドがあったのが、2019年7月には、ENEOSと出光(アポロマーク)とシェルとコスモの4つになります。

将来、出光とシェルもブランド統合することになったりすると、3つになってしまいます。

 

おそらく、エッソ・モービル・ゼネラルの場合、エッソとモービルは海外の商標ですので、ブランド使用料が発生していると思います(あるいは、現金ではなく、原油の購入などの義務かもしれません)。これを避けるとENEOSへの統合になります。

 

今回のシェルも同じことが言えるので、出光ブランドになるのか、日本石油(Nisseki)が、ENEOSになったような第三の商標が生まれるのかもしれません。

 

現在は、商号と商標、セットで考えるのが一般的ですが、JXTGホールディングスなど、全く商号と商標は違います。

JXTGでは、事業がやりづらいという(商標にならない)という判断があったんだと思います。

社名は、マーケティングブランディングを無視して決まる時が、往々にしてあります。

 

その後のENEOSの宣伝投入量はすさまじいものがありますので、あれだけのブランドであった、Nissekiも、徐々に記憶からは薄れています。

 

また、出光が強いなら、出光に一元化という方法もありますし、

社名は出光昭和シェルとしているので、反対にグローバルに強い「シェル」のブランドを担ぐ方法もあります。

 

さらには、当面と言っている、2つのブランドの併存を、長く継続するという方法もあります。

 

さて、どうするのかなぁという感じです。