定着促進策
2018年12月17日の日経の経済教室の、京都大学の若林直樹教授の論考を読みました。
議論のスタートは、日本では20代の若手世代の離職率が25%ほどあり、45歳以上の離職率の10%以下と比べて離職の傾向があり、将来のコア人材の不足、事業発展の制約となるというものです。
この離職は、場合によっては、組織の新陳代謝を促し、一概に悪いことではないという研究もあるようです。
しかし、一般には、競争力の伸び悩み、業績拡大の制約、顧客満足の低下につながるようです。
論考では、海外の研究から、なぜ、従業員が辞めるのかという問題を、「主観的期待効用モデル」「ショックモデル」「職務への埋め込み理論」などを紹介しています。興味があれば、日経を見てください。
人事管理の定着の取り組みとして、コーネル大学のハウスクネヒト准教授らは、
- 平均給与の高さは定着を促進する
- 給与形態は、両面。変動給は離職を促進。成果給は定着に効果がない。高業績者だけ報いると、中下位の社員の流動性があがる
- 職務デザインの改善、従業員の意見を聞くことは、定着に効果
とあります。
他の日本での研究では、日本の長期雇用以外には、
- 給与制度の公平さ
- 長期雇用の方針
- 福利厚生の良さ
が社員に認知されると定着の思考が強まるとあります。(ただし、日本的人事管理制度の効果の研究が少ないようです)
事例として、星野リゾートでは、新事業企画への社員の参加の機会
ワン・ダイニングの社員研修、ビジョンづくり参画、
といった職務デザインや従業員とのコミュニケーションの取り組みを紹介しています。
コメント
大手メーカーから、特許事務所に転職して、1年9ヶ月なのですが、特許事務所業界全体として、離職率は高いなと思います。
ちなみに、離職率ですが、
ある企業の一定の雇用期間の間に「その会社に在籍している人の中で、どれだけ退職していったか」を示す割合を指します。一般的に1年、または3年の期間を設定し、算出されます。
とありました。
離職率とは?計算式や平均値、離職率改善の取組事例、早期離職まで徹底解説 | BizHint(ビズヒント)- 事業の課題にヒントを届けるビジネスメディア
日経の表を見ていると、45歳以上では、男女平均して、8%未満というのが、離職率の多い企業とそうでない企業の判断基準というところのようです。
弁理士は、資格があるので、他に良い就職口があれば、そちらに行くことも多いですし、若くて優秀な方ほど、誘いも多いのではないかと思います。
先日も、ある事務所の商標の責任者をさせれている方から、独立開業しましたと名刺を頂戴しました。独立開業は、弁理士さんにとって、昔は一つの理想形でしたので、素直に良かったなと思います。
しかし、組織として考えると、優秀な方には定着して欲しいとなります。
職務デザインの改善、従業員とのコミュニケーションは、本気でやらないと効果がありません。ガス抜きをした程度では、効果はなく、事業やビジョンを一緒に作り、企業と社員が一体化、仕事の自分事化、松下幸之助のいう社員稼業(一社員も経営者)、が必要ということでしょうか。
給与の公平さのために、変動給や、成果給にしたとしても、それはコーネル大学の研究では定着率にはあまり効果がなく、それよりも、平均給与を上げる方が良いというのは、そうなのかと思いました。確かに、平均給与の高いところでは、周りに離職者もおらず、離職の誘惑がありません。
よって、経営者としては、当面、ここを目指すということになりそうです。
経営者には、事業拡大のために、何ができるかを、社員と一緒に考え抜くことが必要ということでしょうか。
特許事務所では、忙しければ忙しいほど、目の前の仕事をやることだけになりがちであり、また、上司や仲間との関係も案件の対応方法を教えてもらうこと程度であり、ドライな感じです。
小さな組織なので、大企業と異なり、組織と自分のありたい姿を思い描き、その一致点を目指すことも可能だと思いますので、やり方次第だと思います。
改めて、仕事時間の20%程度は、目の前の仕事以外のことをしないといけないなと思います。