Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商品形態模倣(スイス)

混同のおそれと、名声の不正利用

また、続いて、パテント誌の2018年12月号のスイスの論文を読んでいます。読んでいただくことが一番ですが、内容を、非常に簡単に紹介すると、

 

スイスのトレードドレスは、「製品の表装」で、商品の形態及び外観を含むとあります。

まず、知財権による保護があり、著作権、商標権、意匠権、特許による保護があるが、これらが存在しない場合が多く、その場合、トレードドレスの模倣の保護を、不正競争防止法が担当します。

 

不正競争防止法では、

  • 不正な慣行が、列挙され(不競法3条から8条)
  • 一般条項(第2条)もあります。

模倣の自由があり、トレードドレスの模倣自体は、不正競争行為ではないが、

  • 混同のおそれの惹起(3条(1)(d))
  • 名声の利用(3条(1)(e))

は、不正競争であり、公正な競争を保護した結果、トレードドレスが保護されることがある(※このあたり、ドイツと同じ論理展開です)。

 

名声の利用については、規定はありますが、判例等の紹介では言及がありませんので、おそらく、混同のおそれの惹起がメインだと思われます。

 

混同のおそれの惹起では、

  • 識別力(獲得された識別力が多いようです)、
  • 自由な使用(機能的なものを除外しているようです)、
  • 混同のおそれ、などが、チェックされるようです。

 

コメント

まず、なぜスイスなのかと思いました。ドイツがあれば、スイスはなくても良いのでは?と思ったというのが素直なところです。

 

以前勤めていた会社では、スイスは永年、代理店地域だったので、直接の現地会社がなく、そのためスイスが社内で話題が出ることが少なかったので、親近感がないところがありますが、言語も多様ですし、WIPOなどの国際機関も多くあり、重要なんだろうなと思いました。

 

医薬品工業が盛んなので、薬のパッケージなどの事件が多いのか、時計工業が盛んなので、フランク三浦に近いものがあるのか、などと想像しました。

国際的な不正競争防止法案件で、スイスが舞台になるケースが多いのかもしれません。

 

論文の記載内容は、非常に丁寧です。

 

面白いなと思ったのは、

●獲得された識別性は、一般に需要者の60~70%がその標識を商標的出所表示であると認識すれば十分という点

※この数字、案外低くて良いのだと思いました。日本の新しい商標で、これより高い数字を求めていたように思いますが、この程度で十分だと思います。

非常に安価なものについては、裁判所が混同のおそれを認定する可能性は低いが、その差を正当化する理由は沢山ある例えば、売却又は中古)ので、価格差のみで混同のおそれを除外することはほとんどないとしている点

※フランク三浦の事件に影響する考え方です。

機能的なものについて、自動車メーカーの同意を得ずに自動車のスペアパーツを販売する行為は、スペアパーツの商業的出所について欺瞞がない限り、不正競争行為を構成しないという点

 

インクジェットプリンターの、カートリッジの再利用品などは、このあたりですね。この延長で考えると、欺瞞がないので、不正競争行為にならないんだと思いました。

 

一般条項には、刑事罰は適用されない

 

罪刑法定主義、予測可能性から、そうだと思います。

 

という点でしょうか。