Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

TeaCoffeeの大阪地裁判決

妥当な結論

2019年3月14日の産経新聞に、TeaCoffeeの判決があったという記事がありました。

www.sankei.com

  • エーゲル(京都市)がアサヒ飲料に3,300万円の損害賠償を求めた訴訟で判決
  • エーゲルは2016年、京都の煎茶とコーヒーを融合させた飲み物を「ティーコーヒー」として商品化
  • 2017年に「TeaCoffee」の商標をイラスト付きで登録
  • アサヒ飲料は2018年、カフェラテとほうじ茶を合わせた商品「ワンダ TEA COFFEE」を発売
  • 大阪地裁は14日、請求を棄却
  • 判決理由は、商標の文字部分である「TeaCoffee」は、商品の品質か原材料を示すに過ぎない
  • 文字のみでエーゲルの商品を示すとまでの認識は得られていない
  • 2社の商標に共通するのは文字部分のみで、類似性は認められない

コメント

裁判所のWebサイトには、未掲載なのですが、産経の記事を見た限り、判決は妥当なところと思います。

J-Plat Patで見たところ、すでに、アサヒ飲料の「(図形付きの)TEA COFFEE/ティーコーヒー」は、提訴後直後の2018年8月17日に商標登録されています(登録第6071970号)。異議申立てがあった記録もありません。この段階で、原告のエーゲル側に本気で争う意思なしとなります。

 

原告は、アサヒ飲料の登録を知って、あきらめたのかも知れませんし、気づかなかったのかもしれません。気付かなかったとすれば、訴訟までしていうのに、対応がまずかったとなります。

 

さて、判決は、商標の文字部分である「TeaCoffee」は、商品の品質か原材料を示すに過ぎないとしています。

原告のエーゲルは、他にも、文字商標の「TeaCofee」を出願していますが、こちらは、208年12月26日拒絶理由通知は出ていますが、拒絶査定は出ていません。

裁判の結果を待つというところだったのでしょうか。

 

さて、原告のエーゲルの商標も、アサヒ飲料の商標も、同じなのですが、気になったのは、登録時の指定商品の記載です。

「TeaCoffee」「TEA COFFEE」と、「TEA」「COFFEE」の2つからなる単語ですが、スペースの有無は、大文字小文字の違いは、ほぼ無視できる程度のものです。

通常は、何らかの形の「お茶とコーヒーの組合せ」だろうと推測できます。

 

実際の指定商品は、エーゲルの権利が第30類の「茶、コーヒー、茶入りコーヒー、コーヒー豆」であり、アサヒ飲料の権利が第30類の「コーヒー、茶、茶入りコーヒー、コーヒーを加味してなる菓子、茶を加味してなる菓子、コーヒーを加味してなるパン、茶を加味してなるパン、コーヒー豆」となっています。

 

双方とも「茶入りコーヒー」を指定していますが、これは、類似商品役務審査基準にある言葉ではありません。

「ラジカセ」「テレビデオ」と同じような複合商品です。

審査で審査官が、「茶、コーヒー、茶入りコーヒー、コーヒー豆」ではなく、「茶入りコヒー」だけにして限定するよう指令を出しておけば、この事件は、防げたかもしれないと思いました。「茶」「コーヒー」「コーヒー豆」があるので、原告が、この権利で権利行使可能と思ったのかもしれません。

 

もし、原告の「(図形付きの)TeaCoffee」の指定商品が、「茶入りコーヒー」だけなら、茶入りコーヒーとTeaCoffeeは、同じ概念の日本語英語の違いですので、商標の要部は図形だけになります。

権利は、図形にあることがより明確になり、原告も権利行使を思い留まったのではないかと想像します。

審査官も、この権利で権利行使するとは思わなかったのかしれませんが、審査官としては、複合商品の場合の指定商品は、そこまで限定させた方が、良いような感じがします。

 

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