必要なこと、件数比較
昨日の関連記事です。同じ日の日経(2019年3月15日)の5面に載っていた、説明記事からです。
- 日本で訴訟が可能となると企業の負担が軽くなる
- 日本で知財訴訟をしようとする外国企業は増える
- 知財に詳しい裁判官の育成が必要
- 法解釈だけではなく、最新のビジネスに詳しい裁判官の育成が不可欠
- 国内の紛争解決の実績が伸びれば、知財に関する情報や人材の集積につながる
数字としては、
- 日本の特許訴訟(の第一審ベース)の件数は、2016年で166件
- 米国は5080件
- 韓国は2018年に英語を使える訴訟制度を導入
というものです。
コメント
今、企業では、ポリコムなどを使った、テレビ会議は一般的です。海外とも直接、HDの画像で会議をします。裁判所は、法廷に出廷しないといけないというのが、まだまだ、遅れているなと思うところです。
おそらく時間はかかるのでしょうが、東京まで出張しなくても裁判ができるようにしないといけませんし、外国人に門戸を広げると、当然の要求として、海外からポリコムでアクセスしたいという要望が出てくると思います。
さて、この記事の特許訴訟の件数ですが、特許侵害裁判で166件とあります。(商標と不正競争、著作権などの事件は、もう少し、あります。)
アメリカの件数と比べると、その差は歴然です。約30倍の訴訟の数です。アメリカの人口が倍と考えても、15倍となります。
ただ、日本企業でも、特許の警告状などは、沢山来ますが、裁判になる前に当事者同士で和解になります。正確な数字はないですが、感覚としては、警告書200件で、訴訟1件というのが現状ではないでしょうか。大企業同士は、クロスライセンスなどで話し合いますし、大企業に下手に警告書を送ると、カウンターで何倍ものの侵害を追求されそうです。商売上のしがらみがあるかもしれません。
訴訟を起こすと、必ず、結論が出るという良い面はありますが、紛争解決に時間とコストがかかるという思いもあります。しかし、裁判所の印紙代が問題ではなく、弁護士費用と準備の手間が問題という意見になりそうなのです。
おそらくは、侵害事件をやったことがないので、訴訟は大変だという思いが先行しているのだと思います。企業の先輩から、訴訟は大変だからやめておけと言って育てられると、企業の知財担当は、訴訟を敬遠するようになります。
しかし、裁判を受ける権利は人権ですし、低廉な費用で見識のある方に判断をしてもらえるとすると、これほど便利なものはありません。
裁判所には、この企業担当者の心理的ハードルを下げる施策、企業担当者や弁理士などを招いての裁判所見学の充実などが、裁判件数を増やす、一番有効な対策ではないかと思います。
英語化のような施策とならび、他の面の対策も有効かもしれません。
外国企業は、カウンターの恐れや、商売上のしがらみが少ないだけ、純粋にその権利を行使してくるかもしれません。ここが、この英語で訴訟が有用な点ではないかと思います。
知財高裁の統計のページが参考になります。
知財の民事事件は、第一審ペースで2008年から2017年で、497件から692件とあります。最後の2017年に大幅に伸びています。
参考までですが、統計によると、審決取消が下火です。
2008年から2017年で、496件から236件と半減しています。(理由は不明ですが、特許庁の審判の制度があがっているということなのでしょうか。)
こちらも参考までですが、4年間の東京・大阪の地裁の統計のようですが、
民事事件では、請求容認系が半分。請求棄却系が半分です。これは、訴訟は、所詮、勝つか負けるかの世界ですので、良く理解できます。
請求容認といっても、和解が全体の3分の2、実際の容認判決が3分の1です。
そんな感じです。