Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

どうなるのか?

三菱重工の商標権の差押え

2019年3月27日のFNN PRIMEで、韓国で三菱重工の商標権が差し押さえられているという記事を見ました。

【独自】三菱重工「ロゴマーク」も差し押さえ 韓国「徴用」裁判で - FNN.jpプライムオンライン

  • いわゆる徴用工をめぐる韓国での裁判
  • 韓国の裁判所は、三菱重工の韓国国内の資産を差し押さえた
  • MHIMHI Groupなど、三菱重工三菱重工グループの商標権が含まれている
  • これらのロゴマークは、社員の名刺や展示会などで使用していた
  • 原告側が商標権を売却して現金化した場合、韓国国内では、ロゴマークを自由に使えないことになる
  • 他にも関連特許6件が差押えの対象に

コメント

外国の裁判所で、日本企業が訴えられて、不利な判決が出たとしても、その国に支店等でもなければ、その国に、差押えの対象となる、直接の財産はありません。(子会社や合弁会社はあると思いますが、別法人であり、基本は別ものです。)

 

その場合は、日本の裁判所における外国判決の承認執行の問題になります。

これはこれでハードルです。

 

ただ、知的財産権、特に特許権や商標権は、国毎の権利で、日本企業の名義で、その国に登録されていますので、今回のようなことが理論上は起こりえます。

 

しかし、特許や商標の争いで、特許や商標の差押えというのは、あまり聞いたことがありません。

国際的な、特許や商標の争いは、通常は、国際的な企業同士の争いであり、どこかで和解が成立するものだからでしょうか。

 

金銭債権の執行段階や、企業が破産した場合の財産処分としての商標権の差押え、税金の滞納時の商標権の差異抑えはあると思いますが、国内問題ですし、国境を越えた紛争を解決する手段としての特許権や商標権の差押えは、はじめて聞く問題です。

 

今後の進展次第で、原告側は売却手続きを進めるとしています。

記事には、売却がされると三菱重工が使えなくなるとあります。動産では差押えがされると使えなくなるようにイメージしますが、無体財産権の場合、売却されるまでは、事実上は使えるのですね。

 

今回の特許や商標の差押えが、交渉材料として有効な手段なのかどうかは不明ですが、こんな方法もあるのんだなと思った内容です。

権利を買ってくれる先が、簡単には見つからないという気もしますが、この手段が乱発されるようになると、各社とも差押え可能な財産が、世界中にあることになります。

 

そこまで行くと、企業としては、残念ながら、その国の事業からは撤退せざるを得ないということになるのでしょうか。