Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

国際調停の合意に強制力

国連新条約、2020年発効を目標

2019年4月22日の日経に、国連が、国際的なビジネス解決の手段として、国際調停の合意内容に強制力を持たせる条約作りを進めているという記事がありました。

 

国際的な取引では、裁判外の紛争解決手段(ADR)を、選ぶ企業が増えている。裁判と違い、非公開で、仲裁人や調停人は、当事者が選定できる。秘密保持もでき、各国法に縛られることもない。

 

ただ、仲裁は1年など長期化するときもある。この点、調停は、3日程度が多い。国際的にも調停の活性化を求める声があり。

 

しかし、仲裁には、150ヵ国・地域に効力がある条約があるが、調停には条約がない。特に、調停の履行には、当事者の任意。

 

そこで国連は、2014年から調停に強制力を持たせる条約づくりを進めている。新条約は今年8月にシンガポールで署名。

 

日本の調停は遅れており、民事執行法の改正、ADR基本法の改正などが必要。

というような内容です。

 

コメント

調停に強制力を持たせるとなると、仲裁と調停の違いが分からなくなります。仲裁よりも、調停が早いのは理解しましたが、審理(話合い)の期間が長いものが仲裁で、短いものが調停という程度の区別になるのでしょうか?

どういうことなのかな?という感じです。

 

Wikipediaで、「仲裁」を見ると、仲裁人は法律的素養があれば弁護士である必要はなく、仲裁は、機関仲裁というものと、アドホック仲裁というものがあるようです。

 

国際仲裁は、ニューヨーク条約により、裁判よりも執行が確かということで活用されており、アジアでは、シンガポールと香港が仲裁地といて広く利用されており、英国法系の法律家にとって、巨大なリーガルマーケットとなっているとあります。

仲裁 - Wikipedia

 

一方、Wikipoediaの「調停」の説明は、シンプルです。アメリカなどで、自主交渉援助型調停(ミディエーション)という流れがあり、単に法規を当てはめるのではなく、第三者(ミディエーター)が、当事者の自主的な話し合いを援助し、対話を促進することで、解決に向けた合意の成立を目指すとあります。

調停 - Wikipedia

 

「仲裁 調停」で検索すると、ADR Japanというページが出てきました。ここでは、ADR(Alternatirve Dispute Resolution、代替的紛争解決、裁判外紛争解決)の説明があります。

ADR JAPAN

 

この中で、外国では、仲裁をADRの一種と考えないという傾向が顕著になっているとあります。紛争の解決方法を、強制可能なものとそうでないものに分けると、仲裁は裁判と同じとあります。

調停、DAB(拘束力のない委員会決定)、ミニトライアル(経営者が営業的な見地から解決策を模索する方法)など、裁判と仲裁を除いたものを、ADRとする分類があるようです。

 

この分け方で考えると、国連の準備しているものは、調停に法的拘束力を付けるものなので、裁判・仲裁・調停が、ワンセットになって、それ以外のADRと分けることになります。

 

いろんなADRがあり、それは仲裁、調停に限られるものではない。

国際的な紛争解決手段としての仲裁は、シンガポールなどの仲裁裁判所などを活用し、英国法系諸国の弁護士を中心に、裁判以上に活用されており、それは仲裁の裁定はニューヨーク条約で、執行ができるためである。

 

調停は、期間が短く便利ではあるが、執行で問題になることがあり、それに、仲裁と同様な法的拘束力を付ける方向性が、今回の記事、となると、

調停は、仲裁裁判所を利用しない、アドホック仲裁と非常に近いものになるということでしょうか。