Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

クアルコムの米連邦地裁判決

FTCが勝訴

2019年5月24日の日経に、クアルコムとFTC(米連邦取引委員会)の独禁法違反の裁判で、競争を阻害しているとの判断で、FTCが勝訴したという記事があります。

クアルコム、知財戦略に暗雲 米連邦地裁「競争を阻害」 :日本経済新聞

  • 2017年に独禁法違反の疑いで、FTCがクアルコムを提訴
  • クアルコムの、モデムチップの世界シャアは5割
  • 供給停止をちらつかせ、広範囲なライセンスの抱き合わせ販売で埠頭に高い収益
  • 5G対応スマホ向けの半導体ではクアルコムの競争力は圧倒的
  • 判決は、電力消費を抑える特許など様々なライセンスの利用の有無がモデムチップの供給に影響しないよう、スマホ企業などとの取引条件を再交渉するように命じた
  • クアルコムは控訴する方針
  • クアルコム半導体の利益率は、約15%(約5億4200万ドル)
  • 一方、知財ライセンスの利益率は、約60%(約6億7400万ドル)

 

コメント

4月中旬に、アップルとの和解があり、クアルコムの株価も上がっていたようです。それが、このFTCとの裁判の判決で、1日で11%近く下落したとあります。

 

もし、アップとの和解が、この判決後になっていたら、アップルはより有利な和解条件を求めることができたかもしれません。

あるいは、そのあたりのことも、織り込んで、アップルは、クアルコムと和解したのこもしれません。どちらにせよ、難しそうな判断です。

 

さて、門外漢なので、よくは分かりませんが、大切そうなのは、日経にある、「電力消費を抑える特許など様々なライセンスの利用の有無がモデムチップの供給に影響しないように取引条件を再交渉するように命じた」の部分です。

 

これを読む限り、クアルコムと関連特許のライセンスを受けていないと、クアルコムの製品供給を受けらない状態と読めます。

昔風の製品を買ったら特許ライセンス不要という考え方ではなさそうです。

 

5G対応スマホ向けでは、クアルコムの製品は圧倒的なシェアであり、アップルも本当はクアルコムではなく、インテル半導体で対応したかったが、インテルの開発が追いつかず、クアルコム半導体を導入したようです。

 

独占的な商品があり、その商品を買うには、特許ライセンスの抱き合わせ販売があるということでしょうか。

 

まだ、控訴するようですし、最高裁まで行くとありますので、数年かかりそうですが、その間は、特許ライセンスの無い会社にも、クアルコム半導体を売るのでしょうか?

 

クアルコム半導体を買ってくれるお客さんでも、さらに、特許ライセンスまで受けて、2重に対価を支払わないといけない点は、特許の取り方次第で、可能と思いますが、そのような戦略をとれている日本企業は少ないんだろうと思います。

 

ただ、5Gのような大きな技術は別として、小さな技術分野ではできない手法ではないように思います。

このあたりが、いわゆる知財戦略なんでしょうね。