Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

KIMONOの商標登録

キム・カーダシアンの新ブランド

2019年6月27日のBBC News Japanに、キム・カーダシアン・ウエストさんの矯正下着のブランド名が、「KIMONO」と発表されたことに対して、批判が起こっているという話があります。

下着ブランド名に「キモノ」、日本文化への侮辱と批判が殺到 米タレント - BBCニュース

  • 矯正下着のブランド名に「KIMONO」という名称を使用
  • 日本の伝統的な着物を侮辱しているとして物議
  • ソーシャルメディア上では、矯正下着ブランド名に「KIMONO」を使用することは、伝統的な着物を軽視しているとして、多くの日本人が反発
  • 着物や日本文化への敬意がない
  • 単に自分の名前にかけたダジャレとして使われている
  • 9つの色を展開する「KIMONO」矯正下着は、9色展開
  • 自分の肌の色味に合う矯正下着が見つからなかったことへの解決策
  • XXSから4XLまでサイズがあり、サイズと多様性
  • 矯正下着に、それとは正反対の特徴を持つ着物と同じ名称を使うことは皮肉
  • 批判はハッシュタグ「KimOhNo」(着物と「キム、オーノー=キム、やめて」)
  • 「KIMONO」という名称を、日本文化とではなく、カーダシアン・ウェスト氏と結びつけて考えるようになってしまうのではないかと懸念

コメント

この矯正下着、強いインパクトのある商品です。商品は、良いものなので、売れるのかもしれません。

今回は、下着と着物の関係性、日本文化への敬意という話なので、単なる商標問題ではありません。

 

まず、着物は上品、下着はそうでないとも言えません。下着メーカーからすると、下着も大切な商品です。

ただ、下着に着物「KIMONO」と命名されて、怒っている人がいるのも事実です。国際問題になってもおかしくないですが、そこまで大問題にならないような気もします。

 

キム・カーダシアンさんが、批判を受けて「KIMONO」の使用をやめるのか、良い宣伝になったとして、継続するのか、現時点では不明です。双方の選択肢がありえます。批判の収束状況を見て、決めるのかもしれません。

 

弁理士としては、米国で、商標登録が取れるのかどうかが、気になるところです。特に、「THE SLANTS」の最高裁判例がありましたので、商標の採択と表現の自由は、最近、問題になっており、この問題も同じようなところがあります。

日本的にいうと商標の採択そのものが、公序良俗違反になるかどうかというところです。

 

商品がよほど離れれば、KIMONOをブランドとして使っても問題ないのでしょうが、着物も下着も、上位概念的に考えれば、同じ被服なので、問題も生じやすいというところです。

 

日本の類似役務審査基準を見ると、被服という大概念の下に、洋服、和服、下着があり、おのおのは、非類似商品となっています。商品非類似は、そうだろうと思います。

 

では、もし、日本で「KIMONO」が、商品「下着」に商標出願されたとしたらどうなるでしょうか?おそらく、商標法3条1項3号(記述的商標)と4条1項16号(品質誤認)で、拒絶されます。

 

アメリカなので、日本ほどは、「着物」、「きもの」、「KIMONO」についての、知識がないという前提でも、拒絶される可能性は十分あります。

特に、今回は、BBCでも取り上げられたような話なので、USPTOもそれなりに対応するのではないかと推測します。

 

キム・カーダシアンさんや、KIMONO INSTIMATESの登録がないか、USPTOのサイトで見たのですが、出願中のものしか発見できませんでした。様子を見ないと仕方ない状態です。

 

「KIMONO」単体ではなく、「KIMONO~」なら、登録は可能かもしれません。KIMONOズバリではないので、日本文化への被害も少ないと思います。

 

ただ、古い権利で、「コンドーム」に「KIMONO」が登録されているものは発見しました。登録第3323756号です。これは、LIVEですので、現存している権利です。実際使用しているようですし、26年以上使っているとあります。

Thin Condoms - The Official Kimono Condoms Website 

 

26年前は、SNSもないですし、商品は相当離れているので、異議を仮にやっても、負けた可能性が高いですし、何も言う方法がなかったというところでしょうか。

 

着物業界にとって、キム・カーダシアンさんの権利よりも、こちらの方が、問題なような気がしますが、これをひっくり返すのは、今となっては、とても難しいと思います。