Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

北大サマーセミナー(4日目 その1)

店舗等デザイン、営業形態の保護

2019年8月18日は、最終日で、田村先生のお話しでした。午前中は、上記のテーマで、コメダ珈琲の事件であり、意匠法の改正につながるものです。

 

●まず、仮処分事件のコメダ珈琲事件を、写真を使って、詳しく説明されました。個々のデザインは世の中に沢山あるのですが、全部真似るとやり過ぎという感じのするものです。

基本は店舗外観であり、プラスして内装まで主張しているようです。内装を主張することで、主張は狭く絞り込むことになりますが、それだけ不競法違反になる可能性はアップします。

結論は、店舗外観は、不競法2条1項1号及び2号の商品等表示に該当し、それは周知であり、仮処分が認められたということのようです。

 

ちなみに、メニュー(飲み物、食べ物)は、営業方法というようなのですが、その保護は否定されたようです。

 

●新しい意匠法では、建築物の外観、内装まで、意匠登録の対象になりますが、当時は、意匠登録ができませんでしたので、意匠の保護はありません。

 

●不競法のデッドコピー規制(2条1項3号)では、不動産自体を商品とするなら抑えられるそうですが、コメダは場合は、そうではないので、無理があるようです。また、3年以上経過しています。

 

●次に、著作権法では、積水ハウスの住宅では著作物性が否定され、ステラマッカートニー青山事件のような突飛な建物外観は、著作物性が認定されているようです。

ファストファッション事件の「分離可能性説」というのものがあり、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性をそなえて、はじめて著作物となるようです。

どうも、著作物になるものは、相当程度に創作性の高いものに限定するというのが、あるようです。

 

●次に、不競法ですが、めしや食堂事件(外観について類似性を否定)、西松屋事件(内装について営業表示該当性を否定)などの紹介がありました。

 

それらの検討の上、不競法に戻り、商品等表示該当性について検討し、判例は、特別顕著性+周知性を求めているが、田村先生は、特別顕著性は不要で、周知一本で良いという立場のようです。

そして、周知性は、条文上、もう一度チェックするので、ダブっているがこれは問題ないだろうという説明でした。

具体的な周知性の主張では、アンケートが多用されており、10%を超えると周知のようです(※助成想起か、純粋想起か良くわかりませんでした。)。

ウッドシェルフ事件では、アンケート結果が否定の方向で使われたようです。

 

●意匠などの工業所有権と不競法との区分けについては、長らくドイツの影響で、技術的形態除外説が有力だったようです。技術的形態は工業所有権法で保護するので、不競法で保護しないという考え方です。

それが、竹田判事の調整不要説を経て、田村先生は競争上似ざるを得ない形態除外説というもののようです。

競争上似ざるを得ない形態除外説は、技術的形態除外説と近い結論になるようで、最近は、技術的形態除外説が復活しているとありました。

 

●よくある考え方ですが、店舗の外観→店舗名→内装という伝統的な順序で店舗が識別されるので、外観は重要であり、内装はそれほど重要でないようです。

将来は、SNSの発達等で、内装の方が重要になるかもしれないのですが、当面は、今のままのようです。

 

●商標については、IDEMITSUガソリンスタンド事例など、文字が主要な要素であることが多いようであり、文字のない建築的な商標は、フジテレビの社屋とTSUTAYAの店舗のみだそうです。

 

●ポパイ事件は、大岡さばきであり、先例的価値はなく、大きく使っている方が、より商標的という、先生のズバッとした意見は、そうだよなという感じがします。

しかし、世間では、漫画などをTシャツに書く場合、ワンポイトマークは商標的で、大きく書くと意匠的(著作物的)という理解が多く、この理解をひっくり返すだけでも、数十年はかかるような気がします。

 

●最後に、今回の意匠法改正について、建物の外観は良いが、内装は保護が難しい面もあり、美観の統一というものが重要で、審査基準が重要ということでした。

 

英語圏では、Channelingというようですが、案件を処理するのに、どの法律を使うか重要になるようです。この日の話を聞いていて、日常、外国商標しかなっていないことを改めて考えました。

確かに、外国商標でも、模倣品事件などをやると、商標のみならず、商号や不競法や意匠も登場します。

弁理士も、特許だ、商標だ、意匠だと境目を作らず業務をしないと、顧客の要望にマッチしないことになるなと、改めて思いました。