Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

中国商標 小売・卸の役務

現状はどうなっているのか?

日本で小売・卸が役務として導入されて10年以上経ちましたが、中国の現状はどうなっているのか?、インターネット検索で簡単に分かる範囲で、調べてみました。

 

まず、「中国 商標 小売 役務」でGoogle検索をすると、INPITの新興国知財情報データバンクの「中国における小売・卸売役務商標の保護の現状について」が出来ています(2018年9月20日)。

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15845/

 

原則は、「小売役務」が認められないが、例外的に「医薬用、獣医用、衛生製剤および医療用品の小売・卸売に限って認められるとあります(2012年改正)。

 

そこから、Bird & Bird 法律事務所の説明にリンクされています。

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-Ⅾcontent/uploads/2018/08/16c618531db4f0babb91b0b49f6bbd3b.pdf

 

前述の小売・卸売役務しか指定でいきないので、

小売・卸売事業に使用する商標を権利化する場合、小売・卸売の概念 に最も近いと考えられている役務「販売促進(他人のため)」(中国語:替他人推 销)(区分表第 35 類第 3503 類似群)を指定することが広く行われている

とあります。「販売促進(他人のため)」で代用しているのが、日本の小売役務導入前の状況に良くにています。

以前、アメリカは小売役務を認めているのに対して、英国は認めておらず商品商標で小売をカバーするという考えでした。それでは、百貨店なスーパーは、全ての商品分類で、商標権を取る必要があり、それは無理があるという話でしあ。

サービスマーク導入後も、小売りが認められなったので、代替として、「商品の品揃え、陳列」などとして権利を取っていましたが、この状況とそっくりです。

 

中国の裁判所の判決(北京市高級人民法院の2016年判決)では、35類の「販売促進(他人のため)」(3503)では、小売・卸売役務は含まないとはしているようです。

論点は、不使用取消や商標権侵害事件において、商標局、商標評審委員会、裁判所の考えが必ずしも一致していない点にあるとしています。

 

そして、この記事では、お薦めとして、「販売促進(他人のため)」だけではなく、例えば「マーケティング」、「小売り目的の通信媒体における商品の展示」、「商 品・役務のセラーとバイヤーのためのオンラインマーケット提供」等も同時に 指定する方法があるとしています。権利取得を勧めていますね。

 

もう一つ、TMfestaに載っているLinda Liuの35類の商標の不使用取消での証拠認定という資料もあります。「販売促進(他人のため)」という代替の権利を取得しても、不使用取消になるという論点です。

 

中国:不使用取消審判における第35類商標の証拠認定について - Linda Liu Group – TMfesta.com

ここでも、商標局は、権利者からの証拠だけで判断するので権利者有利に判断する(権利を維持する)のに対して、商標評審委員会、裁判所などは、そうでもないとあります。

 

詳細は、Linda Liuの解説があります。

http://www.lindapatent.com/uploads/soft/190319/2019deng_shang__3nianbushiyongquxiao_panshijian____di35_shang__shiyong____ding______3__shijian_tong_____.pdf

 

Linda LiuのPDFに、なぜ、今、35類の小売が問題になっているかについては、次のようにあります。

現在、大部分の商品の卸売・小売役務がまだ中国商標登録の商品・役務分類に導入されていないことにより、出願人と一部の商標弁理士が第 35 類の役務内容の本質を取り違えていること、それに先取出願及び冒認出願が依然として深刻で、電子取引プラットフォーム及びショッピングモールなどからの強引な要求があることにより、出願人に指定役務を第 35 類として商標登録出願させることを加 速させているからである。

そうだろうなぁという印象です。医薬品などだけの小売役務しか認めない点に、無理があります。なぜ、医薬品だけなのでしょうか?健康被害防止でしょうか?

 

しかし、その経営業務に関わっていない第 35 類を指定役務として登録され た商標が、3年不使用を理由として取消審判を請求されると、合法で有効な使用証拠を提供できない ことにより、登録商標が取消されるという運命を免れない。

ここは、中国法の建前としては、そうなんだろうと思います。

 

医薬品等だけ、小売役務を認めるのは、健康被害等の問題があるからなんだと思ったのですが、国際分類に関するニース協定で、

Retail services for pharmaceutical, veterinary and sanitary preparations and medical supplies

を認めているからともいえます。この問題の解決は、単にニース協定の改定待ちなのかもしれません。

 

現実的には、インターネットの小売業者が35類の権利の提示を求めるなら、商標オーナーとしては、35類にも、出願せざるを得ないという感じはします。

グローバル化した今日、中国でも、時間の問題で認めざるを得ないのではないかと想像します。どうでしょうか。