発明推進協会の研修会に参加しました
2019年8月28日に発明推進協会で開催された「(知財課題を共有する)侵害対応チャートの作り方」という講演会に参加しました。
最近、模倣品関係の相談も多少あるので、その情報収集になればと思っての参加です。
講師は、元発明推進協会外国相談室の相談員の大池唯夫さんです。電機メーカー(日本ビクター)の知財におられて、60歳の定年後、10年間、発明推進協会で外国相談室におられたとのことであり、そのときの経験をベースにしたお話しです。
チャートを作る実習の付いた研修で、非常に珍しいものです。実習は、発明推進協会の方が講師でした。
特許庁の委託を受けて、この10年超、発明推進協会では外国関係の侵害事案の相談を受け付けており、中小企業の駆け込みで寺のようになっているようです。
中小企業だからと言って、事案が簡単なわけではなく、登場人物も多数ありますし、時間軸としても数年のスパンで理解しないといけないようです。
当初、整理されていない状態で相談に来られるのを、話を良く聴いて、見やすく整理をして、社長さんなどと共有しようというのが、この侵害対応チャートです。
チャートは、縦軸に登場人物、横軸に時間軸となっています。
詳しくは、研修会でお聞きいただくしかないのですが、面白いアイディアだなと思いました。
講師の大池さんには、個人的には、元のメーカーのときに、お世話になっており、ダブルブランドの考え方を教えてもらったり、商標の業務・役割をブザンのマインドマップを使って説明したものをもらったり(この資料はまだ持っています)、非常に参考になりました。
今回の研修では、チャートは、実際の事例をまとめた、侵害事例21例という冊子がテキストです。これは、10年間で遭遇した事例をまとめたものです。帰りの電車で再読しましたが、これに回答をするのは、大変だなと思いました。
この侵害対応チャートは、まずは、相談員として、内容を理解し、そして、相談者と理解を共有するためのもののようです。
現地の弁護士、弁理士には、最終的には、書面で整理した形で、伝える必要があり、そのときに、この絵解きのチャートあれば、書面作成が容易になります。
このチャート、国内外の弁護士、弁理士にとっても、流れが絵解きされているので、理解を促進するメリットがあるようにおもました。
弁護士、弁理士は、一つの案件を処理しているわけではなく、複数の案件を並行して処理します。現地代理人に指示を出した後は、しばらくは現地代理人の時間であり、時間があきます。その間に、他のことをやっていると、元の案件の詳細を忘れてしまうことがあります。
そんなときに、この侵害対応チャートがあると、案件の記憶を瞬時に呼ぼ戻すことができるような気がしました。
講師は、視点が広いし、非常にアイディアにあふれた人なんだと思っていましたが、今回の侵害対応チャートもそのアイディアの一つのようです。
今回の研修でも、「陸王」の事件で、侵害チャートを作ったらどうなるかなど、アイディアが詰まっていました。
メインのチャートの話ではなかったのですが、「商標点検」というものを推奨されていました。弁理士は、出願して、登録になるまでは仕事をするが、次は10年後の更新まで、何もしません。
企業としては、この10年で商品も変化するし、海外展開しています。それをフォローするために、「商標点検」をしましょうということです。
企業の商標管理では、事業部知財が行ってくれている部分かもしれません。次回は、この話をもう少し聞きたいなと思いました。
これとハウスマークの「棚卸し」を加えると、企業の「商標管理」概論の骨子になりそうです。
この2年半、特許事務所に勤務して、多くのお客さんと接して感じたことは、どうも中小企業だけではなく、名の知れた大企業も、商標管理として、何をどうするべきか、悩んでいるということです。
商標管理をやってこられた方の知見は、一子相伝的に、企業内で受け継がれるものだったのですが、商標担当者の転職が容易になり(企業間では多いように思います)、また、組織変更や担当変更があり、企業でも商標管理の考え方が受け継がれていないようです。ここは、しっかりまとめ直す、社会的なニーズがあるように思いました
まずは、このチャートを、発明推進協会から本を出されたらどうかと思いました。