Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日本商標協会の年次大会(その3)

研修会の午後の部

2019年9月6日の研修会の午後の部です。

スピーカーは、シュゼット(アンリシャルパンティエ)の弁護士の田邊さん、住友ゴム工業の清水さん、アシッスの齊藤さん、パナソニックの田尾さんです。

 

アシックスの齊藤さんは、これまで2回話を聞いたことがありますし、パナソニックの田尾さんは元の同僚ですので、おおよその検討はつきます。

住友ゴム工業の清水さんも、お話しをしたことがあるので、全くはじめては田邊弁護士です。

 

田邊さんは、一人法務のブランド管理というテーマでしたが、創業者が義理の父(すなわち、現社長の奥さん)という点で、会場に少しどよめきが起こりました。

不思議でもなんでもないことですが、滅多にないことで、そんなこともあるんだと思いました。

社長の奥さんが、弁護士で、管理部門で法務や知財を見ているとなると、コンプライアンスの強い会社になりそうです。

 

もともと、お菓子業界は、それほど知財意識が高くない方らしいのですが、ティラミスヒーローあたりから、予防法務が重要になっているが、社内では無理なので、外部の特許事務所の弁理士の世話になっているという話でした。

 

製菓業界では普通名称である名称が、商標登録されていることが多く、職人さんが驚いているというのも面白い話です。普通名称化した商標の事後的取消は、一つの論点だと改めて思いました。

 

シュゼットは、アンリシャルパンティエであり、デパ地下展開しているような菓子メーカーでは、もっとも成功している会社だと思います。それに従業員が2500名もおられます。

それにも拘わらず、効果的な助成金の活用と言っておられました。

確かに、巨大企業でも、税恩典や、工場進出地での助成など、重要なテーマですので、そういうこともあるかなと思いました。

弁理士の仕事は、今は、調査や出願や同意書取得ですが、助成金に申請も、一つの仕事なのかなと、今は、少し、思い始めています。

 

住友ゴム工業は、ダンロップスポーツやライセンス事業でのDUNLOPの買収の話です。通常、商標部門は、調査、権利取得、同意書がメイン業務で、NDA、MOU、デューデリ、交渉、契約締結、PMIは、事業部門とライセンス担当、法務担当の仕事という会社が多いと思います。

住友ゴム工業は、そこを取り込んだところがポイントだと思います。

今回のダンロップスポーツや、ライセンス事業の取り込みによって、ライセンス管理が大きな仕事になり、ブランドロゴのマニュアルの運用や、ブランド監査が、大きな仕事になるのではないかと思いました。

 

ライセンスや、ブランド監査は、これからの商標部門の大きな柱になりうる仕事だと思っているので、住友ゴム工業は、ある意味、先端を走っている会社だと思いました。

 

アシックスは、過去、このブログでも紹介した内容です。 nishiny.hatenablog.com

 

最後のパナソニックは、模倣品の話もありましたが、一番は、ブランドの商標権の棚卸しの 話です。

技術の変化の速い業界では、毎年数%づつ、商品・役務が変化します。日本にいると、類似群コードに守られて、気づきませんが、海外では、包括表示せずに、個別指定ですので、権利が不足します。

この権利を、米国における3M社のように、毎年毎年、新規商品・役務を、コツコツと商標権を取得するのは、米国一ヵ国程度なら可能ですが、全世界200ヵ国となると、そのやり方では無理があります。

その対策が、パナソニックのやっているような「棚卸し」です。これは、更新をしないという方法で、非常にユニークです。書き換えの時に、ハウスマークの出し直しをした会社は多いと思います。あれが、世界中で行うことだと思います。

 

商標協会の幹部に、この話をしたことがありますが、たいていは理解してもらえません。同じようなことをしている企業もあるとは思いますが、ほとんどの会社は、ブランド(ハウスマーク)は、そのまま、更新しているように思いますので、これはこれで革命的な内容だと思います。

 

一番の面倒な点は、指定商品・役務リストの作成であり、これを作り続けるのは、多大な労力がかかりますが、これをやり続けるのは、立派なことだと思いました。

 

田尾さんの話は、商標管理の肝だと思います。

 

最後は、アイロンの模倣品の動画でした。

偽物との戦い~Panasonicの模倣品対策~

 

良いスピーカーばかりだなと思いました。