知財管理 2019年9月号
昨日と同じく知財管理の9月号に、「オンライン調査による模倣品発見手法の検討」という論説がありました。
模倣品が発見された後の対策は、経産省や特許庁、JETRO、弁理士会、知財協会などから、多くの対策を紹介した文書もあります。
しかし、模倣品の発見については、従来は、現場からの相談や調査会社、市場モニタリングしか方法がありませんでした。
一方、最近は、オンライン上での模倣品が問題になっています。実際、模倣品発見の契機としては、特許庁の2017年の調査資料によると、実店舗や刊行物が契機になっているのは、国内1651社、海外1552社であるところ、インターネットが契機になっているのは、国内3297社、海外1793社とあります。
本論考は、オンラインでどのような模倣品調査ができるのかをまとめてみたとあります。
- 特許調査を使った模倣品チェック
- 意匠や商標の出願・権利情報を使ったチェック
- ドメインネームのチェック
- 販売情報調査
などがあります。
1~2は、知財担当者にもなじみのあるものです。
3はドメインネーム担当が行う会社が多いと思いますが、これも仕事でやっていたことがあるので、ある程度はなじみがあります。
面白いのは、商標調査で中国商標の画像検索が可能な無料DBの「権大師」でしょうか。これは見てみる価値がありそうです。
本論考のポイントは、4の販売情報調査だと思います。ECサイト上の出品情報をもとに模倣品の可能性があるものを効率的に抽出するとあります。
ECサイト自身も対策を取っていますが、権利者側も自ら対応すべきというもので、この精神は大切だと思います。
商標の異議申立ではないですが、自らの権利は自ら守るものであり、ECサイトや特許庁が守ってくれるのを待つだけのものではありません。
具体的には、Octoparseのようなスクレイピングツール※を活用するとあります。
※Webサイトからデータを収集してローカルデータベースまたはスプレッドシートに保存することをいうようです。
これを、特定のキーワード(模倣品特有のN級品、A級品などの)や、極端に安い価格帯などで絞込むとあります。
さらに、テキストマイニングの共起ネットワーク※を用いてリスト化して、絞り込みを行うとあります。(※文章中の単語の出現パターンが類似するものを線で結んだ図であり、出現数をマーカーの大きさ、共起度の強さを線の太さで示したもの)
このような手法で、正規品と模倣品を区別できるとあります。他にも、ツールの紹介があるのですが、是非、論考を見てください。
また、中国のECサイトで要求される授権証ですが、正規のものが「百度文庫」にあることがあるので、チェックすべきとあります。
そして、再発防止策として、Google アラートの活用をするとあります。
取り組みの優先順位としては、
- 全くの未着手なら、ドメイン調査によるなりすましサイトの確認
- つぎに、既対策案件のGoogleアラートでのチェック、ECサイトの販売情報調査
- 最後に、画像検索やRPAとしています。
企業では、商標の担当者と、模倣品対策の担当者、ドメインネームの担当者が、異なることがあります。商標契約が、商標担当の仕事ではなく、渉外担当の仕事であることもあるかと思います。
今回、この論考を執筆している情報検索委員会のメンバーが、どんな仕事をしている方なのか明確ではありませんが、おそらくは、商標担当ではなく、知財部門のITの担当者であることが多いのではないかと思います。
知財部門のITの担当者も、昔の電子出願の担当、権利管理システムから、徐々に先行技術調査、AI活用、翻訳などにも範囲を広げていると思いますが、模倣品を切り口にすると、また、違うものが見えてくるなという感じです。
テキストマイニングや、スクレイピングと言われても、ピンときませんが、これらは模倣品対策には、重要だなと思います。
こうツールで、能動的に模倣品を発見して、Reactなどを使って先制攻撃することで、模倣品業者に嫌がられる会社に、変わっていけるように思います。
企業では同じ仕事をしていると、進歩がないと言われます。
商標担当の仕事も、これらのITの取り込み次第で、大きく変わってくる可能性があります。
商標とITは、親和性が高いですが、これらは重要だなと思いました。