2019年9月16日の日経に、「知財立国」足元は車頼みという記事がありました。財務省の国際収支のサービス収支に知的財産権等使用料の速報が出ており、それを受けた記事と思われます。
「知財立国」足元は車頼み 稼ぎ手の広がり課題 :日本経済新聞
内容は、
- 知的財産権等使用料の黒字額は、2018年までの10年間で、3.4倍に拡大
- 2018年の黒字額は、前年比15%増の2兆6220億円で、過去最高
- 2019年1月~6月も高水準
- 特許や商標権などの産業財産権等使用料が牽引
- 総務省の(科学技術研究)調査では、分野に偏り。自動車に依存
- 自動車などの輸送機器は、5年前に比べて45%増え、全体の56%
- 医薬品は17%。情報通信機器は7%。電気機器は5%
- 技術輸出の75%が子会社からの収入
- 一方、コンテンツの著作権の収支は赤字。2018年の赤字額は8881億円。ネットフリックスなどの動画配信。ミッキーマウスの著作権の延長
- 日本は、2011年に貿易赤字。2016年と2017年に黒字になった以外は赤字。モノの赤字を知財で補うには、自動車以外の製造業とコンテンツが鍵
というような内容です。
コメント
●財務省の国際収支のサービス収支に知的財産権等使用料の速報が、前年割れをしているようです。速報値ですが、前年の1月~6月期間は、1兆4749億円の黒字だったのが、2019年の同期間は、1兆3136億円とわずかに下がっています。為替の影響もあるので、なんとも言えいないのですが、横ばいというところでしょうか。
●知財収支全体は、特許・ノウハウ・商標は3.5兆円ほどの黒字で、著作権が1兆円弱の赤字で、知財全体として2.5兆円の黒字という状態です。
黒字なので良いように見えますが、特許や商標の黒字は、メーカーが工場を海外にシフトしているので、日本に工場があれば、国際収支には現れないものともいえます。
一方、著作権の支払は、記事ではネットフリックスなどの動画配信が盛んになっており、日本のコンテンツ輸出はまだ軌道に乗っていないようにありますが、こちらの著作権にはコンピュータソフトウェアが入っているので、Windows10への切り替えや、スマホのAndroidやAppleのアプリの課金などが、多いのかもしれないなと思いました。
●財務省の国際収支の統計と、
総務省の科学技術研究調査
の数字が違うので、正確に比較はできないのですが、
日本企業の技術輸出の75%が、子会社からの収入ですので、日本企業の子会社からの特許・ノウハウ・商標の収入を除くと、黒字額は相当少なくなり、著作権の赤字を加味すると、知財全体として赤字ということもできます。
●本当は、特許・ノウハウ・商標の収入の中でも、商標などは、技術についての収入なのか、疑わしいものですので、商標を除外するとすると、相当な赤字ではないかと思います。
●電気メーカーなども、子会社からは特許・ノウハウ・商標の収入は相当あるので、収支への貢献が少ないのは、特許ロイヤルティの支払いが多いためだと思います。
●おそらく、コネクテッドカーや、電気自動車の時代になると、自動車産業の特許ロイヤルティの支払が増える方向ですので、頼みの自動車も将来は不安です。
本気で海外から特許ロイヤルティを取れるように、研究・開発・事業の事業化・ライセンスの高度化・知財人材の強化を図らないといけないように思います。
一見、良さそうに見える統計ですが、実は、相当問題が深いと思いました。
財務省と総務の統計が2つに割れているもの、どうかなという気がします。分かりにくいように思います。