Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

中国の著作権登録

商標でも活用できる

2019年9月19日の特許ニュースに、中国における著作権登録の話が出てます。BLJ法律事務所の遠藤誠弁護士の解説です。

参考になったのは次のような点です。

  • 中国の著作権登録は、2018年に約345万件(一般の著作物が235万件、ソフトウェアの著作物が110万件)と活況
  • 著作権登録は、ある著作物の著作権を任意で登録しておき、登録証書を取得しておく制度で、さまざまなメリット
  • 中国では、「著作権」のことを「版権」という
  • 中国の著作権法では、著作物といえるためには、ある程度の独創性が必要。数個の文字の組合せでは独創性はない
  • 漫画の登場人物などは、シリーズ著作権で一つの著作権登録が可能
  • 必要書類を提出すると、約1ヶ月で「著作権登録証書」(中国語では「作品登記証書」)が発行され、公告される

 

著作権登録のメリットは、

  • 中国の知財侵害事件の60%が著作権侵害訴訟であり、著作権をを行使する際の立証負担が軽減される
  • 三者の商標冒認出願時に、先に著作権登録をしておくと、異議申立や無効審判の理由にできる(商標法32条前段「商標登録の出願は、他人の既存の権利を侵害してはならない」)。中国であらかじめ著作権登録をしておくことで、第三者への商標の冒認出願への対策になる
  • 商標登録よりも、迅速、安価、効果的(商品・役務の指定がなくすべての商品・役務に主張可能。商標は9ヶ月の審査期間。著作権登録には異議や無効審判はない。

というような内容です。詳細は、特許ニュースをご確認ください。

 

コメント

中国代理人から、図形商標について異議申立をするときで、商品区分が異なる場合などに、著作権登録をして、それを根拠(証拠)に異議しましょうと良く云われます。

しかし、商標は古くから使っているもので、誰が著作者かも不明で、いつ著作権が完成し、いつ最初の発表があったのか、などの情報が分からず、今更、著作権登録ができないということが多々あります。

 

著作権登録の有効性は、アメリカでも言われます。立体商標よりも、著作権登録を勧められます。

 

図形、立体商標、ロゴでも相当図案化されたものなどは、単なる商標と捉えるのではなく、著作物と捉えて、著作権登録を取るのは、米中では必須ではないかと思います。

 

この、

  1. 誰が著作者か、
  2. いつ著作権が完成したのか、
  3. いつ最初の発表があったのか、

は、創作者の情報を別とすれば、商標でいうと先使用主義的な話で、英米法系では必要な情報とよく似ています。

 

アメリカなどは、商標は先使用主義の国ですし、著作権でも昔は方式主義だった国なので、著作権登録が盛んなのは分かるのですが、中国で、著作権登録が盛んなのは、意外です。

 

中国法は、世界の法律の良いところを、徹底的にまねていますので、著作権登録は価値があると判断したのかなと思います。

 

ポイントは、日本の企業の商標実務です。商標調査、商標出願に特化しすぎて、それも、楽な日本の制度に慣れ過ぎて、

  • 誰が著作者か、
  • いつ著作権が完成したのか、
  • いつ最初の発表があったのか、

程度の情報が管理できていないのです。図形商標で、将来とも続くような重要な商標の場合、この3点セットを、必ず確認して、明確化するようにすべきです。

特許や意匠の人は、ある程度、やっています。

 

商標の人は、楽な制度(本国登録やマドプロ)に慣れ過ぎて、感覚が鈍っているのだと思います。 

この点、マドプロが無かった時代の方が、商標担当者も海外の使用証拠の収集にシビアだったのだと思います。

 

使用証拠の収集は、商標担当者のミッションの大きなところですので、ここは、商標管理の考え方を今一度、整理しておくべきかもしれません。

 

さて、特許ニュースは、バックナンバーの入手が難しい点が難点でしたが、最近、バックナンバー検索・閲覧サービスがスタートしています。

特許ニュースバックナンバー検索・閲覧サービス

ちょっと高いので、個人ではなかなか入れないですが、事務所で入れば活用できそうです。

昔、自分で書いた判例紹介を確認したかったので、トライアルに申し込んでみました。対象期間外なので、たどり着けなかったのですが、システム自体はよくできているなと思いました。