Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

小野市観光協会の「ONO消しゴム」

業者任せと類似判断

Yahoo!ニュースで見のですが、神戸新聞NEXTのニュースで、小野市観光協会が作成した「ONO消しゴム」が販売中止になったという記事があります。

神戸新聞NEXT|総合|許可なく「ONO消しゴム」販売中止 小野市観光協会

写真は、神戸新聞NEXTで見てください。

(「MONO消しゴム」の色は、上から、青、白、黒なのに対して、問題になっている「ONO消しゴム」は、色が水色、白、黒のものと、オレンジ、白、薄緑でインド国旗のような色のものの2種類です。)

  • 「MONO消しゴム」はトンボ鉛筆が製造
  • 兵庫県小野市観光協会は、パロディー版の「ONO消しゴム」を同社の許可を得ず作成
  • 「MONO消しゴム」は青、白、黒のストライプ柄で、色彩の商標として日本で初めて登録された
  • 製造した大阪府内の業者は「MONO」の字体やケースの色を変えれば問題ない。トンボ鉛筆本社にも確認を取ったと説明
  • 神戸新聞社トンボ鉛筆本社に確認
  • 業者からの許可申請がなかったことが判明
  • イベントでの消しゴム販売を中止し、業者は代金を返金
  • 同協会は、直接同社に確認しなかったのは詰めが甘かったとの談

また、読売新聞にも、関連記事があります。

「ONO」消しゴム…トンボ鉛筆の商品まねて、無断作製 : 国内 : ニュース : 読売新聞オンライン

 

業者は「以前に同様の商品を扱ったことがあり、その際のルールのままで製造可能と思い込み、トンボ鉛筆の大阪店に口頭で伝えた。ルールが変わったのは知らなかった」

 

コメント

トンボ鉛筆の商標権は、登録5930334 号で、指定商品は第16類「消しゴム」、商標は下記で、色彩の組合せからなる色彩のみからなる商標です。

色彩の組合せとしては、青色(Pantone 293C)、白色(プロセスカラーの組合せ:C=0,M=0,Y=0,K=0)、黒色(プロセスカラーの組合せ:C=0,M=0,Y=0,K=100)であり、配色は、上から順に、青色、白色、黒色が商標の縦幅を3等分しているとあります。

Pantone293C、Panasonicの色と同じ色です。

 

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実際の消しゴムは、長方形ですが、ここでは正方形に切り取っています。
また、「MONO」の言葉はありません。
 
水色、白、黒の組合せは、この色彩のみからなる商標権の権利範囲と言えるかもしれませんが、オレンジ、白、薄緑のインド国旗パターンは、難しいと思います。
 
「ONO」と「MONO」、こちらの方が、近い感じです。
 
実際は、色と文字の組合せで、全体として近いものがあります。トンボ鉛筆側としては、「MONO消しゴム」の希釈化を防ぐために、止めて欲しいものであり、許可を求められたら、NGと回答するというのは分かります。
 
ポイントは、許可を求める必要があるのか、許可を求める必要もない、本来自由にできることなのかですが、判決が出ているわけではないので、この事案からは何も言えません。
 
パロディでも、「フランク三浦」などは、登録可否の審決取消訴訟での話ではありますが、別登録になったりしています。
 
なお、小野市観光協会が、消しゴムについて、インド国旗の色のバージョンを、色彩の組合せの商標として出願しても、使用実績・周知性がないとして、簡単には登録されません。
この点は、使用実績があり、登録されている「フランク三浦」と違う点でしょうか。
 
まあ、実務的には、トンボ鉛筆に許可を求めて、NGなら諦めるしかないというところでしょうか。そもそも、この種の企画をあまり、考えないことですね。
 
先行権利者をどこまで保護するか、パロディをどこまで認めるかは、文化的な許容度のような話ですし、そこには批判精神や機智があり、別の面白さがある必要があります。
レベルの高いパロディと、単なる便乗商法の区別が難しいなと思います。