Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

セミナーに参加しました(応用美術の再検討2)

応用美術の保護(日本)

2019年11月16日の早稲田大学セミナーの続きです。

 

元裁判官の岡本岳弁護士・弁理士の話は、BAO BAO事件、ゴナU事件、TRIPP TRAPP事件ですが、各事件とも著作権侵害だけではなく、不正競争防止法や、一般不法行為法、が合わせて請求されています。

 

特に、実務上、不正競争防止法違反とセットで請求されることは多く、応用美術の著作権侵害は認定されにくいことがありますが、それを不正競争がカバーしていることが多いようです。

ちなみに、ゴナU事件は、不法行為が認めれらると良いのですが、北朝鮮事件最高裁判決があるため(著作権侵害に該当しない著作物の利用行為が、一般不法行為にならない)、課題があるようです。

ちなみに、タイプフェイスについては、ヤギ・ボールド事件でも、著作物性が否定されています。しかし、これは昔の写植の時代のタイプフェイスであり、今のコンピュータ化されたデジタルのフォントになると、コンピュータソフトウェアと捉える考えも有力なようです。

 

日本の判例の概観は、平井祐希弁護士・弁理から、まとめて説明していただきました。

応用美術でも、著作物性が認定されたものと、否定されたものがあります。

  1. 人形:〇博多人形、妖怪フィギュア ×ファービー人形、動物フィギュア
  2. 椅子:〇TRIPP TRAPP ×別の椅子
  3. 日用品:×口紅型の加湿器、ゴミ箱、子供用はし
  4. 平面:〇ピクトグラム ×ワイナリー看板、木目化粧紙、帯のデザイン
  5. その他:〇Tシャツの絵柄 ×ゴルフシャフト、衣服、BAO BAOの鞄

印象としては、日本では、応用美術については、世間一般で考えるよりも、かなり狭いかなという感じです。Tシャツの絵柄は、分離可能性説的に考えているのでしょうか。

 

なお、美術工芸品は、量産しても、一品制作でも、著作権が成立するようです。

 

ファッションショー映像事件は、分離可能性説たって、ファッションショーの要素を分離できずに、著作権は成立しないとしています。

一方、TRIPP TRAPP事件は、不正競争防止法違反とは認められない状態だったため、著作権侵害を認めたのですが、この考え方は著作物があふれてしまうという危惧があるようです。(※その方が、世間の著作物の認識に近いような気はするのですが)。TRIPP TRAPPフランス法の「美の一体性原則」に近いようです。

 

ちなみに、ゴナUの大阪地裁の裁判官ですが、大学の同級生でした。有名な判決を書いたんだなと思いました。

岡本先生曰く、同じ時期の知財高裁といっても、裁判体が違えば、判断は異なるのが裁判ということでした。

TRIPP TRAPPで、不正競争防止法違反となっていれば、ややこしい議論のある著作権侵害に入らずに済んだのかもしれません。

 

プロダクトデザイナーの意識は、もっと応用美術も著作物で保護して良いのではないでしょうか。デザイナーの保護を考え、日本をデザインで良くしていこうという精神であれば、著作物性を広く認めるフランス法EU判決に、見るべき点はありそうです。

特に、意匠は特許庁費用以外に、図面作成と特許事務所費用など、コストがかかります。著作権で保護して欲しいという要望は、高いように思います。

 

ただ、デザイナー個人の視点では、意匠なら、職務発明として報償もありますが、著作物となると、意匠以上に法人著作が認められ、成果物はデザイナーの手を離れて、会社のものになります。当日、2名のデザイナーから、この話を聞きました。

このあたりを考えるのが、法とデザイン協会のミッションなのかなと思いました。