日米企業間に差
2019年12月11日の日経に、「偽サイト対策海外に学べ」「五輪チケット販売で被害懸念」「強制閉鎖やドメイン活用」という記事がありました。
(真相深層)偽サイト対策、海外に学べ 五輪チケット販売で被害懸念 強制閉鎖やドメイン活用 :日本経済新聞
- ブランドと消費者を守るため、海外では仲裁の活用が増加
- ドメインネームにTOKYOや2020を含み五輪公式サイトと誤認されるドメインが約950(一部は悪用)
- smbcに似せたドメインも増加
- WIPOの仲裁(UDRPドメイン名紛争処理方針を採用)で、取消や強制移転が可能(レゴとカルフールの事例)
- 利用件数は2018年は3447件。米国は976件だが、日本は30件に留まる
- ブランド保護のためにドメインが重要ということが日本では未定着
- ドメインの登録件数にも差
- アマゾンは約2万8千件所有。楽天は5千件
- アップルも約2万7千件所有。ソニーは約1万5千件
- 他にGMとトヨタ、P&Gと花王の比較
- 社内でルールを決めたり、デジタル資産の管理者を明確にする必要
というような内容です。
コメント
ドメインネーム(ドメイン名)を、記事ではドメインと省略しているようです。
記事ではドメイン名の管理体制を一元化するような点も云っています。商標の場合、昔は社長の委任状が必要だったことや、現在も電子出願で専門的なところもあり、管理が一元化されている会社がほとんどだと思います。これに比べると、ドメインはお名前ドットコムなどで、簡単に取れたりするので、管理ルールが決まっておらず、管理がバラバラになりがちです。まずは、企業(グループ内での)ポリシーづくりというのは、その通りと思います。
記事に出ていた、数字に着目しました。
日本企業が米国企業と比べて、WIPOのUDRPの件数が少ないのは、そもそも日本企業が使っているドメインがJPドメインやCO.JPドメインであって、.COMなどのWIPOがUDRPに従って仲裁しているドメインとは別のドメイン名であり、よって紛争処理もWIPOではなく日本知的財産仲裁センターに行くためではないかと思います。
https://www.wipo.int/amc/ja/domains/guide/
しかし、日本知的財産仲裁センターの仲裁は、年間10件もありません(2018年は7件)。
CO.JPの場合、一企業一ドメイン名に限定されていますので、あまり紛争が起こらないのは分かるのですが、JPドメインは一企業複数ドメイン名の登録が可能です。
種類と対象 | JPドメイン名の種類 | JPドメイン名について | JPRS
それなのに、こんなにドメイン名についての紛争が少ないのか、不思議な感じがします。至って平和な感じです。
JPドメインの場合は、一企業複数ドメイン名の取得が可能ですが、日本国内に住所を持つ組織・個人・団体に限られるとあります。
日本で、他人のドメイン名に近いドメインを取得して、悪用しようとする人は少ない理由は、このあたりにありそうです。
CO.JPやJPドメインは、日本企業ということが分かるのは良いのですが、グローバル企業となり、世界で戦うときは、各国各様のドメイン名での展開になり、CO.JPやJPでは限界があるように思います。アマゾンを見ると分かるように、地域に根差した企業活動をするには、すべてCO.JPやJPでは限界があります。
.COMですべて統一するか、各国ドメインにするかは、悩ましいところですが、どちらにせよ、CO.JPやJPではありません。
CO.JPやJPの世界を出たとたん、紛争の世界に入りますので、ドメイン名取得やWIPO仲裁などが必要になります。
一方、ドメイン名の取得件数ですが、楽天とアマゾンのドメイン名取得件数に5倍の差がある、アップルとソニーで2倍の差があるとありますが、事業規模も違うので、こちらはこんなものかなという感じです。
ただ、約1万5千件のソニーはさすがだと思いました。この数字を見て、各社驚いているのではないかと思います。
ドメイン名は、国やドメインによって違いますが、年間3千円とかの料金が必要ですので、10年で見ると3万円になったりして、 実は商標と大差ない金額がかかったりします。1万5千件もあると、相当な金額になりそうです。