Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

昭和シェルと出光興産

ブランド統合へ

2019年12月10日の日経に、昭和シェルと経営統合した出光興産の社長が、ブランド統合を検討しているという記事がありました。

出光、全国で給油所改革 社長「ブランド統一検討」 :日本経済新聞

  • EVのカーシェア「オートシェア」を全国に広げる
  • 従来の方針を転換して、EV事業を積極展開
  • 給油所のブランドは、出光興産の「アポロマーク」、昭和シェルの「ペクテン」がある
  • 当面、併存の方針だったが、取材では「統一を検討」にと社長が発言
  • 割引カードの共通化なでで、販売戦略の足並みをそろえ、集客効果
  • JXTGホールディングスは、給油所のブランドを「ENEOS」に統一し、顧客からわかりやすいと評価
  • 今回、販売店からも要望あり。ブランドの一本化が不可欠
  • 「アポロマーク」そろえる方向が有力視
  • 石油メジャーは、すでにLNG事業や再生エネルギー事業にシフト
  • 20年後には石油事業は半減する見通し

とあります。

 

コメント

Wikipediaによると、2019年4月から、昭和シェルは出光興産の子会社ということです。将来的には、合併を目指しているとあります。

出光興産 - Wikipedia

 

同社のWebサイトによると、商号は「出光興産株式会社」で、トレードネームは「出光昭和シェル」となっています。

会社概要 | 会社情報 | 出光興産(出光昭和シェル)

 

商標担当者としては、Trade nameとTrademarkの違い、Trade nameとBusiness nameとの違いなど気になるところです(ついでに、Brand nameとの違いも気になります)。

 

辞書的は意味では、商号に対応する英語が「Trade name」であり、商号とトレードネームは同じと考えることが多いですが、出光興産は、商号とトレードネームを使い分けているようです。

おそらく、「商号」は法的に登記されている正式名称の意味で、「トレードネーム」は商売上使っている名称という意味だと思います。ビジネスネームや屋号に近いものだと思います。

 

さて、細かい点はさておき、こ創業家からのクレームがありましたし、対等合併のようなイメージでいたのですが、記事では昭和シェルと出光興産の関係は、昭和シェルが出光興産に吸収されるような書きっぷりです。

社名も、出光興産中心ですし、ブランドも出光興産のアポロマークになる方向との話です。

 

アポロマークは、図形商標なので、言葉の商標が必要です。「IDEMITSU」か「アポロ」かですが、おそらく「IDEMITSU」なんでしょうね。世界で戦うなら、「アポロ」よりも、独自性の高い「IDEMITSU」です。日本でも、出光さんという氏は非常にレアです。

ただし、シェルと貝殻は、両商標の外観・観念・称呼が一致しますが、IDEMITSUとアポロマークは、これらが不一致です。

商標はやはり言葉が重要ですので、IDEMITSUのロゴを中心にして、給油店の看板などにだけ、アイキャッチとしてアポロマークを使うというのが素直でしょうか。

 

また、この記事を読んで、日本から、ついに「シェル」のマークが無くなるのかと思いました。

「シェル」のマークは、「ペクテン」というようです。pecten/ペクテンは、ホタテ貝のラテン名であり、「櫛」の意味。殻の表面にみられる放射肋(ロク)が、櫛を思わせるところから、ということのようです。

ホタテガイ

 

映画のシェルブールの雨傘で、シェルのマークが出てきて、フランスでもシェルの給油店なんだと思った記憶があります。

 

シェルに統一すると、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルにブランド使用料の支払が必要になるでしょうから、アポロマークにするのは分かります。

NissekiやJOMOを止めて、ENEOSにしたように、別のブランドを創ることも可能であり、新しさあるのですが、今回、この手法はとらないようですね。

 

ENEOSといい、IDEMITSU/アポロマークといい、基本は日本中心のブランドであり、ローカルブランドです。

 

ガソリンスタンドのブランドが、世界に進出するには、メジャーのようにならないといけない大変な世界なんでしょうね。