雑誌発売日のネット公開
2019年12月26日の朝日新聞に、人気漫画のカードキャプターさくらが、最新話をYouTubeで先行公開するという話が出ています。
日本語、英語、中国語などの6カ国語に翻訳されています。
作者の創作集団CLAMPのデビュー30周年の記念と、海外で人気が高いこと、最近は海賊版がYouTubeにアップされることが多いことから、今回の取り組みになったとあります。
コメント
実際に、YouTubeで見てみました。
一話6~7分で、スライドショーのように、順番に台詞が表示されます。このスピードが標準的な漫画を読むスピードなのかと思いました。少し遅い感じですが、順番に吹き出しに言葉が出てくるのは、新鮮であり、悪くありません。
30周年記念や海外で人気という話は、キャンペーンとして無償公開する理由になります。海外では、更に読者を増やす効果が見込まれます。
さて、先行公開と海賊版対策との関係です。海賊版は作品の公開後にスキャンやコピーをして、YouTubeなどの媒体に公開され、作品の有償販売を妨害するものです。
海賊版よりも先に公開すると、読者が公式版を見るというのはよくわかります。
しかし、無償公開なので、読者はこちらを見ますが、有償になると見られるのかなという気がします。
もちろん、海賊版は法律違反ですし、止めないといけません。
しかし、考えないといけないのは、ビジネスの側面です。
漫画の本なら定価で500円として、出版社と同じクオリティで、500円でレベルの高い海賊版を作るのは至難の技です。
一方、デジタルの場合は、コピーが簡単です。本物のデジタル版も、海賊版も、クオリティも大差ないのだと思います。
そこで、価格が500円と無料となると勝負になりません。公式版の公開が無償になると公式版が勝ちます。
しかし、無償にすると公式版は海賊版と同様に広告宣伝費しか収入がなくなります。
それでも、その読者が爆発的な数いるなら、権利者が納得できる収入になるかも知れません。
爆発的な数の読者がいない場合、印税と流通経費を入れて、100円程度なら採算のあうギリギリのとして、100円で無償に勝てるかです。
顧客からして、100円に見合うクオリティが確保できるかが、ポイントです。
ただ、100円というのも、閲覧者が爆発的に増えると、実はもっと安くできます。
今回実験は、この辺りのデータを取るためのものなら有用そうです。
また、アマゾンプライムに入るとアマゾンプライムビデオやアマゾンプライムミュージックが追加費用なしで見ることができます。
新しい映画や人気コンテンツは、レンタルビデオ並みの追加料金が必要ですが、映画や音楽の場合、このタイプのものがプラットホームとして機能しています。
おそらく漫画の世界でも、このタイプのプラットホームが出てくると漫画村の問題が少しは改善するように思います。
デジタルコンテンツの流通という面で、映画や音楽に比べて、漫画が遅れているということが言えるのかなあと思います。
今回の講談社の取り組みですが、単発なら単なるプロモーションですが、課金の取り組みと合わせて、初めて海賊版対策になると思いました。