Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標担当者になったときに読む本(その3)

はじめての知財

3日間の集合研修で、途中入社なので、年齢、性別はさまざまな同期とも親しくなりました。

さあ、企業における実際の仕事です。

 

9時始業なので、少し早めに会社に到着し、本社の人事部に立ち寄りました。

人事の課長から、本社事業場の説明と、本社の人事ルールの説明があります。従業員3000人の会社となると、事業部や営業所が複数あり、拠点ごとに独自の決まりがあるようです。

説明も一通り終わり、10時半ごろ、知財部に案内してもらいました。

 

知財部では、皆さんと簡単にご挨拶して、知財部長との話からスタートです。知財部長Bさんとは、入社時の面談のときに会っています。

 

知財部長は、技術出身の方ですが、事業部長経験もある方であり、広い視点で知財を見ることができる方です。

知財部長からは、「私」に何を期待しているかの話がありました。

 

嘱託社員のとなっている、商標担当のCさんは、もともとは営業出身の方で、流通の販売施策などを担当者していた方のようですが、40歳ぐらいに知財部に来たということです。それ以来、20年間ほど、この会社の商標を一人で担当していました。

英語は得意ではないようですが、営業経験があり、新しいアイディアを考えることが好きなので、施策を考えるのが上手であるとのことです。

部長の「私」への第一の期待は、Cさんから商標の業務知識を吸収して、一人で商標業務を担当できるようになってほしいということでした。

これは想定内の話です。

 

B部長から、知財部全体の話がありました。近年、会社は成長軌道にのり、特に海外事業が活性化しています。海外売り上げ比率も5割を超えているのすが、国内特許権の取得はいい線であるものの、事業規模に見合った外国特許権の取得が出来ていないと言います。

以前、アメリカで特許権侵害裁判の被告になったことがあり、アメリカ向けの製品輸出がストップするかと会社中が心配したということです。

この事件は、事業部の技術者が見つけてくれた先行技術のおかげで、相手の特許権の無効を裁判所が認めてくれ、事なきを得たということですが、社内の知財部を見る目は厳しいものになっているということです。これは期待の裏返しともいえます。

 

B部長は、知財部の目指すべきものとして、3つの考え方を提示してくれました。一つは徹底した知財調査による「事業の安全確保」、二つめは職務発明制度の適切な運用による「創作の奨励」、三つ目は「知財制度を経営に生かす」ということです。

一つ目は、アメリカの特許事件のようなものを起こさないということで、理解しやすでしす、二つめの創作の奨励も知財は特許=発明・考案についてのものですので、理解できます。三つめがポイントであり、日本や海外の知財制度は日々進化しており、新しい制度や他社の優良事例を見つけて、経営者に提言し、会社の仕組みを変えて知財制度のメリットを最大限会社に注入するということのようです。

 

B部長は、技術には明るいのですが、営業や商標には不案内ということで、「私」に対する期待として、ベテランのCさんが完全にリタイヤするまでに、Cさんの話を聞きながら、「商標」について「私」なりの考え方をまとめて欲しいと言います。

このような考え方があると、会社の他の部門の人々を説得したり、知財部員をまとめるのに、非常に有効であると言いことです。

大きな宿題をもらった感じです。