Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標担当者になったときに読む本(その5)

挨拶回り

ベテラン商標担当者のCさんが、まずは挨拶回りをしようと言います。

特許事務所では、クライアントの方から事務所に来ていただくことが多く、お客さんのところに行くことはあまりありません。

明細書を書く特許の担当者は、会社の研究所や事業部の発明者のところに行って、発明の内容を聞くことがあるようですが、商標ではクライアントの方から特許事務所に来るか、電話で事が足りることがほとんどでした。

商標調査のデータベースの会社や、システムの会社、翻訳会社など、取引先の方も、事務所に来てくれるので、ほとんど外出は不要です。

反対に、事務所にいて、膨大な書類と毎日格闘することが求められます。毎日、100通ほどのメールは見ますし(自分が返信すべきものは10~20通程度です)、事務所を半日空けると、滞貨が発生して残業が必要になるので、あまり外出を好みません。

 

そのため、同じ会社内で挨拶をするということだけでも、非常に珍しいものに感じました。

まずは、法務部です。法務部からは、M&Aの関係や、模倣品、商標条項の入った契約書の相談などがあると言います。法務部の皆さんに、Cさんが紹介してくれます。

 

「私」は、数年前に弁理士試験に合格した弁理士で、都内の中規模の事務所で、商標を担当していた。今回、縁があって当社に来てくれることになり、Cさんの後任として今後は、この会社の商標を担ってもらうことになりますので、宜しくというような説明です。

 

次は、経理部です。何か新しいことをするときは、稟議書を回して決裁をとり、決裁願には必ず経理部の確認が必要ということでした。アイディアを考えることが好きなCさんは経理の所長とも懇意なようです。

 

そして、総務部です。総務部は株主へ年2回レポートを出したり、株主総会を仕切ったりしているそうです。商標担当と付き合いがあるのは、新会社を設立したりするときということです。

従業員3,000人の会社ではありますが、関係会社は50社ほどあります。最近は、海外で新会社ができることが多いそうです。そのたびに、社名が議論になり、商標担当に確認が来るとのことです。

 

次に、デザイン部です。商品デザインは、会社の製品のデザインは、こちらでやっているようです。ドラフターなどはなく、コンピュータに向かってデザインしています。3Dプリンターがあり、考えた造形を直ぐに形にできるとのことでした。

意匠資料などもそろっていて、意匠出願は熱心にやっているようです。デザイナーなので、商標のロゴマークのデザインなどもするのかと質問しましたが、それはグラフィックデザインの仕事であり、こちらはプロダクトデザインで専門分野が違うといいます。

デザイナーというのも、専門分野が分化しているんだなと思いました。

 

最後に、広報宣伝部です。広報宣伝部は、花形のセクションで、ショウルームを運営し、企業広告を出し、マスコミ対応をします。また、会社のWebサイトを運営したり、ニュースリリースを出したりしているようです。

新しい商品が出るときのネーミングは、事業部門の営業部門が、商品の販促(プロモーション)の一環として商品宣伝等を担当しており、各事業部門の営業部門が、独自に商品ネーミングをすることが多いということでした。

 

これまでは、特許事務所の担当者だったので、企業の方というと商標担当者とばかりお付き合いをしていました。サービス業の会社などは、技術者がいないため、知財部そのものがなく、法務部が商標の仕事をしていることも多いのですが、法務部員はそれなりの専門家です。

 

会社に入ると、多くの人達とネットワークを組まないといけないんだなと感心しました。

特に、広報宣伝部門の方や、営業部門の方は、今までお客さんだと思っていた企業の商標部門の、その先のお客さんであり、商標の源流に少し近づいた感じがします。