Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ギャランツ創業家の象印株の取得

13.5%の株式を保有

2020年1月21日の日経新聞に、中国の電子レンジ大手のギャランツの創業家が、象印マホービンの株式の13.5%を保有し、象印の経営や投資に問題があるとして、取締役候補を株主提案しているという記事がありました。

中国ギャランツ、象印株買い増し 泥沼の展開も :日本経済新聞

  • 梁父子は、2018年夏から、純投資として象印の株を保有
  • 中国で人気の、象印が持つ、技術、ブランド力は、本来の力が発揮されておらず、成長余地が大きいことが理由
  • しかし、象印は、中国でのEC対応が遅れており、爆買いで得た知名度を生かせていない。経営も低迷
  • 梁父子は、効率的な経営や投資がされているか疑問とし、企業統治のロジックが20年前で止まっていると批判
  • 業績反転に向けたアイデアの一つは、ギャランツとの協業
  • 創業家父子の純投資か、ギャランツの経営者としての行動かは不明瞭
  • 株式市場は外圧を好感して、12月後半から2割上昇
  • 2月19日に株主総会
  • その後、TOBに発展するかは不明

というような内容です。

コメント

最近は、落ち着いているようですが、一時期、炊飯器の爆買いがありました。象印とタイガーが炊飯器の有名ブランドですが、特に象印が売れていると聞いたように思います。

新聞記事には、ギャランツの副会長とのインタビュー記事もあり、象印は日本の商品をそのまま販売して、現地のニーズに答えられていないとあります。

 

記事の中では、中国企業に出資・買収された日本企業の例が載っていて、一覧的にまとまったものとして、参考になりました。

 

象印の株価は、2018年の夏ごろは、1500円ぐらいだったようです。それが、その後、1200円ぐらいまで下がっていたようです。

2019年7月ぐらいから上昇に転じて、現在は、2,225円となっています。

新聞記事が2019年12月との比較をしているので、12月ごろに、株式関係者にはこの話は、知られるようになっていたということかもしれません。

 

電子レンジのギャランツと、炊飯器の象印では、協業したとしても、相乗効果をどう出すのはか不明です。

同じ調理関係の機器のTOP企業同士ですが、ブランド力は象印がありそうです。

よって、象印からギャランツへのOEM供給ではなく、象印にギャランツの電子レンジをOEM供給して、象印が商品レンジを拡大することはありえます。また、中国のECサイトなどの商流はギャランツの方が上だと思いますので、ギャランツの商流やノウハウを活用するという方法はあります。

 

象印の株式の30%を創業家が持っているようですので、TOBをしても簡単にマジョリティを取ることは難しそうに思いますが、13.5%は相当多いので、この声は無視できないだろうなと思いました。

 

一点、象印のブランドは、「象のマーク+ZOJIRUSHI」であり、その英文社名も「ZOJIRUSHI CORPORATION」ですが、日本語の社名(商号)が、「象印マホービン株式会社」ということは、課題ありと思いました。

 

「印」という言葉は、「マーク」「商標」の同義語ですので、要部は「象」です。

海外では、「象印」の日本語の音訳の「ZOJIRUSHI」で通ります。

 

中国は漢字の国ですので、「印」は本来の意味になりますので、要部は日本語と同じ「象」です。

すなわち、「エレファント」商標です。イメージとしても強そうですし、良い商標だと思います。

 

このように、商標は良いのですが、日本語社名に「マホービン」がなぜ残っているのかという気がします。

祖業がマホービンということは分かりますが、マホービンの売上があまりないのに今さらマホービンを社名に残しているのは、奇妙な感じはします。

おそらく、昔の社名ネーミングの感覚としては、雪印乳業などのように、広範部分の業態名がないと、何の会社か分からないということだと思いますが、商標の時代になり、更に、ブランドの時代になり、「ZOJIRUSHI」や「象のマーク」で十分な時代なので、いつまでも「マホービン」では、経営が止まっているといわれても仕方ないかという感じがしました。