GI登録の撤回
2020年2月3日の日経新聞で、愛知県の西尾茶協同組合が、取得した地理的表示(GI)の登録を撤回するという記事を見ました。
西尾の抹茶GI取り下げへ 地元組合国に申請、全国初 :日本経済新聞
- 地理的表示の撤回は、全国初
- 流通面のメリットがないとの理由
- 渋みが少なく、うま味が強いのが特徴で、出荷価格が高い(1キロ約3,000円)
- しかし、市場では1キロ千円の製品が求められる
- GI登録で、逆に販路が狭まった。取下げで、低価格の製品を扱えるようにする
- 「西尾の抹茶」を取下げ、「西尾の碾茶(てんちゃ)」をGI登録申請
とあります。
コメント
珍しい話だなと思いました。GIは取得したくともなかなか取得できるものではなく、取得すると利益を生むものと思っていました。
GIが販路縮小につながるというというのは、どういう点が、制約になったのでしょうか?
日経の記事からは、市場で求められている安い商品を売れないようになったとあります。
しかし、ブランド力は、高い商品でこそ作られるものであり、安い商品にブランド力は通常は発生しません。
少量しか売れなくても、高級品にこだわるのブランドを作る道という気がします。
別の新聞の記事を見ていると、
- 日本農業新聞:厳格な製法でコストが高くなり、安い製品が作れなくなった
- 中日新聞:ラテやチョコレートに使うのは加工用。比率は1:9で、加工用が大きな市場。GI登録を取得したのは飲用。値段の幅を広げないと他の産地に市場を席捲されてしまう
- 時事:農林水産省の幹部は、シャンパンは厳しい製法を守り続けて、今の地位を築いた。伝統を捨ててしまえば、今の地位を維持するのは難しいとコメント
などとあります。
背景には、近年、抹茶市場が拡大し、安い加工用が求められ、市場に新規の産地が入って来て競争になっているようです。
GIに申請する時点で、「西尾の抹茶」の製法の基準を高くし過ぎたのかもしれません。生産者も折角取得したGIを取り下げるのは残念ということを言っているようです。何とかならなかったのかなと思います。
Wikipediaによると、「西尾の抹茶」は特許庁の地域団体商標(第5204296号)にもなっているようです。こちらは維持するとあります。
地域団体商標とGIの使い分け、GI申請時の留意点など、貴重なケーススタディになるのではないかと思いました。調べると有益な発見があるのではないでしょうか?
単にGI登録を取得を目指すのではなく、マーケティング戦略や長期的なブランディングまで考えて、GI登録をしないといけないんだなという感じがしました。